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【徹底解説】SANSUI AU-D907X Decadeの特徴|10.7kg電源トランスが生む圧倒的なドライブ力

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SANSUI AU-D907X Decadeは、1985年発売のヴィンテージなプリメインアンプです。

本記事では、その魅力を特徴やおすすめのヴィンテージ音楽機器との組み合わせなど、徹底解説します。

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SANSUI AU-D907X Decadeの概要と特徴

SANSUI AU-D907X Decadeのスペック
発売年1985年
定価193,000円
型式インテグレーテッドDCアンプ
実効出力160W+160W(8Ω、10Hz~20kHz)
全高調波歪率0.003%(8Ω、実効出力時)
ダンピングファクター100(6Ω、新IHF)
重量26.0kg

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ヴィンテージ・プリメインアンプの中でも、なぜSANSUI AU-D907X Decadeが今なお語り継がれるのか。その答えは、スピーカーをプラス側とマイナス側の両方から対等にドライブするツインダイアモンドXバランス・アンプと、10.7kgの超重量級電源トランスが生み出す底知れない駆動力にあります。前モデルのAU-D907Xをベースに電源部を強化し、低音域の再現力をさらに高めたのがこのDecadeです。

以下では、SANSUI AU-D907X Decadeの主要な特徴を一つずつ解説していきます。

ツインダイアモンドXバランス・アンプ【ポイント①】

SANSUI AU-D907X Decadeの中核を担うのが、ツインダイアモンドXバランス・アンプという独自の増幅回路です。従来のシングルドライブ方式ではスピーカーへの電流は+側から送り、−側はアースへ接続するだけでした。この構造では逆起電力がアース側に流れ込んでIHM歪が生じ、NFBも+側にしかかからない問題がありました。

ツインダイアモンドXバランス・アンプでは、入力から出力までの信号回路・電源回路・NFB回路の全てがバランス構成となっており、スピーカーの+側と−側を専用アンプがそれぞれ独立してドライブします。これによりアースの影響を受けたIHM歪が原理的に排除され、左右・プラスマイナスの各軸で均等にコントロールされた精密なスピーカー駆動が実現しています。

さらにパワートランジスタをより有効に働かせるため、ツインダイアモンド差動回路によるパワートランジスタの電流ドライブ2段構成を採用しており、スピーカー駆動能力を最大限に引き出しています。10Hz~20kHzにわたって160W+160W(8Ω)を維持する安定したパワーは、この設計の賜物です。

  • 信号回路・電源回路・NFB回路すべてがバランス構成
  • スピーカーを+側と−側の専用アンプで独立ドライブ
  • ツインダイアモンド差動回路による電流ドライブ2段構成
  • IHM歪を原理的に排除

超重量級電源部が生み出す低域の底力【ポイント②】

AU-D907X Decadeの「Decade」という名称が示す最大の強化ポイントはどこにあるのでしょうか。前モデルのAU-D907Xからの進化の核心は、電源部の大幅な強化による低音域再現力の向上にあります。

その象徴が重量10.7kgという超重量級電源トランスの採用です。主要電解コンデンサーには高音質・高性能型を4本搭載し、小容量フィルムコンデンサーには音質面で優位とされる銅箔スチロール型を選択しています。バランス電源方式を採用することで、パワーアンプ部はプリドライブ部とパワー部をL/R各々で独立させており、各部間の干渉による電圧変動を最小限に抑えています。

バランス電源方式ってどういう仕組みですか?

バランス電源方式

通常の電源はグラウンド(アース)を共通基準として電圧を供給しますが、バランス電源方式では+側と−側を対称に設計した電源でグラウンドから完全に独立してエネルギーを供給する方式です。これによりACラインからのノイズ混入やリップル電流のスピーカーへの流れ込みを防ぎ、クリーンな電力供給を実現します。大出力アンプの低音再生品質に直結する重要な技術です。

消費電力370Wという数値が示すように、AU-D907X Decadeは決して省エネな機器ではありません。しかしその大電力投入こそが、瞬発的な低音の打ち込みや、オーケストラの総奏でも崩れない安定した音場を生み出す源となっています。

  • 10.7kgの超重量級電源トランス搭載
  • 高音質・高性能型電解コンデンサー4本 + 銅箔スチロール型フィルムコンデンサー
  • バランス電源方式 + プリドライブ部・パワー部L/R独立構成
  • 大型・重量級アルミブロック・ヒートシンクで安定動作

High-Precisionイコライザーとアナログ再生への拘り【ポイント③】

AU-D907X Decadeのフォノ回路には、ダイアモンド差動回路を用いたHigh-Precisionイコライザーを採用しています。通常のNFB型フォノイコライザーではNFB量が限られがちな低域まで精密に補正を行うことができ、レコードに刻まれた音楽信号を高い忠実度で再生します。

MCトランスって何のためにあるんですか?

MCトランス

MC(ムービングコイル)型カートリッジは出力電圧がきわめて小さく(0.1〜0.5mV程度)、通常のフォノイコライザーでは増幅しきれないためにMCトランスでインピーダンス変換と昇圧を行います。AU-D907X DecadeではアメリカのマグネティックINC社製スーパーパーマロイコアを用いたモノラルタイプを2個搭載しており、MC-HighとMC-Lowの2ポジションで使い分け可能です。スーパーパーマロイは磁化特性に優れ、MCトランス特有の着色を最小限に抑えます。

イコライザー直結のHigh-MCポジションに加え、MCトランスを経由したMC-HighポジションとMC-Lowポジションの計3系統を搭載しており、カートリッジの出力レベルや音質傾向に合わせた最適な入力経路の選択が可能です。高価なMCカートリッジを最大限に活かすフォノ回路の充実ぶりは、1985年当時のフラッグシップ設計の意地を感じさせます。

SANSUI AU-D907X Decadeと他のヴィンテージプリメインアンプとの比較

SANSUI AU-D907X Decadeと他のヴィンテージプリメインアンプとの比較は以下の通りです。

項目SANSUI AU-D907X DecadeTechnics SU-V9YAMAHA A-2000aLUXMAN L-540
発売年1985年1981年1987年頃1989年2月
定価193,000円125,000円195,000円240,000円
実効出力(8Ω、両ch)160W+160W120W+120W130W+130W100W+100W
全高調波歪率0.003%0.003%0.003%0.015%
ダンピングファクター100(6Ω)80(8Ω)200以上(8Ω)
重量26.0kg14.7kg26kg24kg
消費電力370W205W420W300W

SANSUI AU-D907X DecadeとTechnics SU-V9との比較

SANSUI AU-D907X DecadeとTechnics SU-V9との比較は以下の通りです。

  • 実効出力:AU-D907X Decadeは160W+160W(8Ω)、SU-V9は120W+120W(8Ω)と出力の余裕はAU-D907X Decadeが有利で、大型スピーカーや難鳴らし機種を駆動する場面での差が出やすい比較となります。
  • 全高調波歪率:両機とも0.003%と同水準です。歪率の純粋な数値では互角ですが、SU-V9はニュークラスA方式・リニアフィードバック回路という独自アプローチで同じ数値を実現しており、増幅設計の方向性が大きく異なります。
  • ダンピングファクター:SU-V9はDF 80(8Ω)に対し、AU-D907X DecadeはDF 100(6Ω)です。スピーカー制動力ではAU-D907X Decadeがわずかに優位で、低域の引き締まりに差が出ます。
  • 重量・設置性:SU-V9(14.7kg)はAU-D907X Decade(26kg)の約半分の重量です。設置・移動の扱いやすさではSU-V9が圧倒的に有利で、省スペースを重視する場合にも適しています。

SANSUI AU-D907X DecadeとYAMAHA A-2000aとの比較

SANSUI AU-D907X DecadeとYAMAHA A-2000aとの比較は以下の通りです。

  • 実効出力:AU-D907X Decadeは160W+160W(8Ω)、A-2000aは130W+130W(8Ω)です。定格出力の余裕はAU-D907X Decadeが有利ですが、A-2000aも実用上十分な出力を持ち、両機ともほとんどのスピーカーを余裕で駆動できます。
  • ダンピングファクター:A-2000aはDF 200以上(1kHz、8Ω)という突出した制動力を持ち、AU-D907X Decadeの100(6Ω)を大きく上回ります。スピーカー制動力の数値ではA-2000aが明確に優位で、低域の正確さとタイト感に影響します。
  • 音楽性・設計思想:A-2000aはDual Amp Class Aという独自のピュアA級+ハイパワーAB級の組み合わせとRICHNESS回路を搭載し、音楽的な豊かさを追求しています。音楽的な潤いや特定スピーカーとの相性ではA-2000aが独自の強みを持ちます。
  • 消費電力・定価:A-2000aは消費電力420W・定価¥195,000とAU-D907X Decadeの370W・¥193,000に近い値です。価格・消費電力とも同水準で、選択はサウンドキャラクターや特徴による好みの問題となります。

SANSUI AU-D907X DecadeとLUXMAN L-540との比較

SANSUI AU-D907X DecadeとLUXMAN L-540との比較は以下の通りです。

  • 実効出力:AU-D907X Decadeは160W+160W(8Ω)、L-540は100W+100W(8Ω)と出力の余裕ではAU-D907X Decadeが大きく有利で、低インピーダンスや難鳴らしスピーカーへの駆動力差は顕著です。
  • 全高調波歪率:AU-D907X Decadeは0.003%(8Ω)、L-540は0.015%以下(8Ω)です。低歪率の数値ではAU-D907X Decadeが5倍の優位性を持ちますが、L-540は15W+15Wの純粋なA級動作領域を持ち、小音量での質感はL-540が独自の魅力を発揮します。
  • 動作方式の違い:AU-D907X DecadeはAB級ベースのバランス回路、L-540はA級からAB級への自然移行型です。小音量での音質的な滑らかさではL-540のA級動作が有利ですが、ダイナミックな大音量ではAU-D907X Decadeの余裕が光ります。
  • 価格・重量:L-540(¥240,000、24kg)はAU-D907X Decade(¥193,000、26kg)より約47,000円高価です。コストパフォーマンスではAU-D907X Decadeが有利で、出力・歪率の両面でも上回ります。

SANSUI AU-D907X Decadeとヴィンテージスピーカーとの組み合わせ

SANSUI AU-D907X DecadeとTANNOY Stirlingとの組み合わせ

SANSUI AU-D907X DecadeとTANNOY Stirlingとの組み合わせは以下の通りです。

  • 互換性:TANNOY Stirling(¥198,000/台、1983年頃)は公称インピーダンス8Ω・許容入力100W連続/250Wピークの2ウェイ特殊バスレフ型スピーカーです。AU-D907X Decadeの8Ω出力160W連続に対して、Stirlingの連続許容100Wは理論値上は超えますが、実音楽再生では平均電力が定格をはるかに下回るため、適切なボリューム管理のもとで十分な組み合わせとなります。
  • 音質の向上:TANNOYのデュアルコンセントリック同軸ユニットが持つ音像の定位感と中高域の分解能に対し、AU-D907X DecadeのツインダイアモンドXバランス・アンプが生み出す低域の底力が組み合わさることで、Stirlingの低域限界(35Hz±3dB)を力強く支えます。バリアブル・ポートの3段階調整とAU-D907X Decadeの高いダンピングファクターの組み合わせで低域の調整幅も広がります。
  • おすすめの音楽ジャンルクラシックの室内楽・声楽・ジャズのピアノトリオなどの音楽に最適です。デュアルコンセントリックのポイントソース的な音像とAU-D907X Decadeの安定した電力供給が、演奏者の息遣いまで再現するリアルな音場を作り出します。

SANSUI AU-D907X DecadeとCORAL X-VIIIとの組み合わせ

SANSUI AU-D907X DecadeとCORAL X-VIIIとの組み合わせは以下の通りです。

  • 互換性:CORAL X-VIII(¥113,000/台、1980年頃)はインピーダンス8Ω・プログラムソース入力100W・出力音圧レベル96dB/W/mのバスレフ型フロア型スピーカーです。96dBという高感度特性により、AU-D907X Decadeの160W出力を小音量から大音量まで余裕をもって活用でき、ボリュームをわずかに上げるだけで十分な音圧が得られます。
  • 音質の向上:CORAL X-VIIIの30cmコーン型ウーファーとセクトラルホーン型スコーカー(M-104+AH-502)の組み合わせは、ホーン型特有の鮮烈な中高域の抜けと30cmウーファーの豊かな低域が特長です。AU-D907X Decadeのバランス電源が生み出す大電流供給が30cmウーファーをタイトに制動し、マルチアンプ入力端子を利用したバイアンプ接続でさらなる高品質再生も実現できます。
  • おすすめの音楽ジャンルジャズのビッグバンド・ロック・ポップスのライブ録音など、エネルギー感とホーンの音の飛びが活きるジャンルに最適な組み合わせです。AU-D907X Decadeの160Wの余裕とCORAL X-VIIIの96dB高感度が相乗し、大きなリスニングルームでも場を支配する豊かな音場が展開します。

SANSUI AU-D907X DecadeとDIATONE DS-2000との組み合わせ

SANSUI AU-D907X DecadeとDIATONE DS-2000との組み合わせは以下の通りです。

  • 互換性:DIATONE DS-2000(¥168,000/台、1985年)は公称インピーダンス6Ω・最大入力180W(EIAJ)・再生周波数帯域28Hz~40kHzの3ウェイ密閉型スピーカーです。AU-D907X Decadeは6Ω負荷で190W+190Wを発揮しますが、DS-2000の180W最大入力に対してほぼ上限となるため、適切な音量管理が重要です。双方とも1985年前後の国産ハイエンド機という同世代の組み合わせです。
  • 音質の向上:DS-2000のボロンD.U.D.振動板が持つ超高域40kHzまでのワイドレンジ再生と、AU-D907X DecadeのスルーレイトはDC~300kHz(-3dB)という超広帯域にわたる電流供給能力が組み合わさります。DS-2000の密閉型エンクロージャーとAU-D907X DecadeのDF100の制動力が28Hzという低域の正確な再生を実現します。
  • おすすめの音楽ジャンルオーケストラの大編成・打楽器中心のフュージョン・クラシックのピアノ独奏など、広帯域と瞬発的なトランジェントが問われる音楽に向いた組み合わせです。DS-2000の超ハイスピードなボロン振動板とAU-D907X Decadeのバランス回路が、1980年代国産ハイエンドの到達点を堪能させてくれます。

SANSUI AU-D907X Decadeは、ツインダイアモンドXバランス・アンプと10.7kg電源トランスによる超強力な電源部を搭載した1985年のヴィンテージ・プリメインアンプです。

比較3機種(Technics SU-V9・YAMAHA A-2000a・LUXMAN L-540)との検討を通じて明らかになったのは、出力・歪率・コストパフォーマンスの三拍子がそろったAU-D907X Decadeの実力の高さです。組み合わせるスピーカーにはTANNOY Stirling・CORAL X-VIII・DIATONE DS-2000のように、AU-D907X Decadeの大電力と制動力を活かせるヴィンテージスピーカーが特に相性の良い選択となります。

最後まで読んでいただきありがとうございました

SANSUI AU-D907X Decadeの詳細スペック一覧

SANSUI AU-D907X Decadeのスペック詳細
型式インテグレーテッドDCアンプ
実効出力(10Hz~20kHz、両ch駆動)190W+190W(6Ω) / 160W+160W(8Ω)
全高調波歪率(10Hz~20kHz)0.003%(8Ω、実効出力時) / 0.005%(6Ω、1/2実効出力時)
混変調歪率(60Hz:7kHz=4:1)0.003%(8Ω、実効出力時)
出力帯域幅(IHF、両ch動作、THD 0.03%)5Hz~80kHz
ダンピングファクター100(6Ω、新IHF、20Hz~20kHz)
周波数特性(1W)DC~300kHz +0 -3dB
スルーレイト±300V/μsec(6Ω)
ライズタイム0.5μsec
入力感度/インピーダンス(1kHz)Phono MM:2.5mV/47kΩ / Phono High MC:2.5mV/100Ω / Phono MC Low:100μV/3.2Ω(MCトランス) / CD、Tuner等:150mV/47kΩ
SN比(Aネットワーク)Phono MM:90dB / Phono MC:80dB / CD、Tuner、Tape:110dB
定格消費電力370W
外形寸法幅466×高さ161×奥行431mm
重量26.0kg
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