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JBL 4350は、1973年発売のヴィンテージなスピーカーシステムです。
本記事では、その魅力を特徴やおすすめのヴィンテージ音楽機器との組み合わせなど、徹底解説します。

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JBL 4350の概要と特徴

| JBL 4350のスペック | |
|---|---|
| 発売年 | 1973年 |
| 定価 | ¥993,800(1台) |
| 方式 | 4ウェイ・5スピーカー・バスレフ方式・フロア型 |
| 音圧レベル | 95.5dB(新JIS) |
| インピーダンス | 4Ω(250Hz以下)/8Ω(250Hz以上) |
| 重量 | 110kg(1台) |
JBL 4350は、スタジオモニタースピーカーの頂点を目指してJBLが開発したフロア型スピーカーシステムです。1973年に登場した本機は、38cmコーン型ウーファー2230Aを2基搭載した4ウェイ・5スピーカー構成を採用し、30Hz〜20kHzというワイドレンジを±3dBの許容誤差で再生します。
定価は1台あたり¥993,800という、当時としては破格の価格設定でした。重量110kgの巨大なエンクロージャーに凝縮されたJBLの技術は、1970〜80年代の日本の主要な録音スタジオでも広く採用されていました。
JBL 4350がなぜ今もヴィンテージオーディオファンに語り継がれるのか、3つの視点から掘り下げていきます。
①:マルチアンプ対応の4ウェイ5スピーカー構成
JBL 4350の最大の特徴は、250Hzを境にしたマルチアンプ方式の採用です。250Hz以下の低域を専用パワーアンプで駆動し、250Hz以上の中高域を別のパワーアンプで担当するバイアンプ構成が設計の前提となっています。別売のディバイダー5231(または5232)とフィルター基板52-5121が必須の周辺機器となります。
低域を受け持つ38cmコーン型ウーファー2230Aは2基並列に搭載されており、合計の振動板面積と磁気駆動力によって200W(4Ω)の入力にも耐えます。コーン紙にはJBL独自のコーティング処理とエッジワイズ巻きリボン銅線ボイスコイルを採用しており、低歪で力強い低音再生を実現しています。
中低域には30cmコーン型ウーファー2202Aを1基搭載。バックキャビティが設けられており、2230Aとの背面干渉を防ぐ精密な設計が施されています。5スピーカーをそれぞれの帯域で最適に動作させる、プロフェッショナル機器ならではの思想が本機全体を貫いています。
②:各帯域専用ユニットの精密設計
4350の中高域はどのように設計されているのでしょうか。中高域にはホーン型ドライバー2440とホーン2311、音響レンズ2308の3点セットが組み合わされています。
2440ドライバーには0.076mm厚のアルミ合金ダイアフラムとエッジワイズ巻きアルミリボン線ボイスコイルを採用。JBL独自のエクスポネンシャルホーンと音響レンズの組み合わせによって指向特性を改善しており、水平60°・垂直30°の指向性を12kHzまで維持しています。

エクスポネンシャルホーンって何ですか?
指数関数的に開口面積が拡大するホーン形状のことです。この形状は低域の再生限界周波数を下げつつ高効率を維持できるため、スタジオモニターや音響増幅システムに広く採用されています。
高域にはリング型トゥイーター2405を搭載。0.056mm厚のアルミ箔を空気圧で成型したリングダイアフラムにより、20kHzまでを±3dB以内で再生します。クロスオーバー周波数は中高域で1.1kHzと9kHzに設定されたL-Cタイプネットワークを内蔵しており、ネットワークの前段にある250Hzの電子クロスオーバーと合わせて帯域分割を実現しています。
- 低域:38cmコーン型 2230A ×2(エッジワイズ巻きリボン銅線ボイスコイル)
- 中低域:30cmコーン型 2202A(バックキャビティ内蔵)
- 中高域:ホーン型 2440+2311+2308(エクスポネンシャルホーン+音響レンズ)
- 高域:リング型 2405(0.056mm厚アルミ箔ダイアフラム)
③:スタジオ由来の高音圧と広大なダイナミックレンジ
JBL 4350の音圧レベルは95.5dB(新JIS)を誇ります。これはホーム用スピーカーの平均的な感度(85〜88dB程度)を大きく上回る数値であり、少ない入力電力でも非常に大きな音量を得られることを意味します。許容入力(連続プログラム)は低域側で200W(4Ω)、中高域側で100W(8Ω)に達し、ピーク時の最大音圧は126dB SPL(10フィート、許容入力1/2プログラム時)という驚異的な数値を実現しています。



dB SPLって何ですか?
音の大きさを表す単位です。人間の会話が約60〜65dB SPL、ロックコンサートの最前列が約110〜120dB SPLとされています。126dB SPLはジェットエンジン近傍に匹敵するほどの音圧であり、スタジオモニターとしての圧倒的な余裕を示しています。
第3次高調波歪率は、低域(33Hz〜1.2kHz)において108dB SPL時で1%以下、中域(1.2kHz〜5kHz)において101dB SPL時で0.6%以下という優れた数値を持っています。スタジオでの過酷な使用条件下でも原音の歪みを最小限に抑える設計思想が、ヴィンテージとなった現在も多くのオーディオファンを魅了し続けています。
JBL 4350と他のヴィンテージスピーカーとの比較


ここでは、JBL 4350を同時代の大型ヴィンテージスピーカー3機種と比較します。Technics SB-10000、YAMAHA NS-2000、DIATONE DS-5000の各スペックを確認していきます。
| 項目 | JBL 4350 | Technics SB-10000 | YAMAHA NS-2000 | DIATONE DS-5000 |
|---|---|---|---|---|
| 使用ユニット | 4ウェイ5スピーカー(38cmx2+30cm+ホーン型+リング型) | 3ウェイ3スピーカー(46cm+10cmホーン+3.5cmホーン) | 3ウェイ3スピーカー(30cm+8.8cmドーム+3cmドーム) | 4ウェイ4スピーカー(40cm+25cm+6.5cmドーム+2.3cmドーム) |
| 再生周波数帯域 | 30Hz〜20kHz ±3dB | 30Hz〜22kHz -10dB | 28Hz〜20kHz | 20Hz〜60kHz |
| インピーダンス | 4Ω(250Hz以下)/8Ω(250Hz以上) | 6Ω | 6Ω | 6Ω |
| 最大入力 | 200W(4Ω)/100W(8Ω) | 300W(MUSIC) | 125W(連続)/250W(ミュージック) | 250W(EIAJ) |
| 音圧レベル/感度 | 95.5dB(新JIS) | 95dB/W/m | 90dB/W/m | 93dB/W/m |
| 外形寸法 | 幅1,210×高さ890×奥行510mm | 幅1,115×高さ1,200×奥行705mm | 幅440×高さ752×奥行404mm | 幅635×高さ1,050×奥行460mm |
| 重量(1台) | 110kg | 140kg | 47kg | 87kg |
JBL 4350とTechnics SB-10000との比較
JBL 4350とTechnics SB-10000との比較は以下の通りです。
- 使用ユニット:4350は38cmウーファー2基を含む5スピーカー構成で低域の駆動力が圧倒的です。SB-10000は単体46cm口径で重低音を稼ぐ設計を採用しています。ウーファー並列搭載による合成駆動力ではJBL 4350が優位です。
- 再生周波数帯域:4350が30Hz〜20kHz ±3dBに対し、SB-10000は30Hz〜22kHz(-10dB基準)。許容誤差の基準が異なる中でも実用的な低域再生能力は両者ほぼ同等であり、どちらも30Hzからの低域をカバーしています。
- 音圧レベル:4350の95.5dBに対しSB-10000は95dB/W/mとほぼ同等です。どちらも高効率設計であり、少ないアンプ出力で大音量を得られる点は共通しています。
- 重量・サイズ:SB-10000は140kgと4350を上回る重量を持ちます。設置・搬入のしやすさではJBL 4350(110kg)がわずかに有利ですが、どちらも専門業者による搬入が前提の大型機です。
JBL 4350とYAMAHA NS-2000との比較
JBL 4350とYAMAHA NS-2000との比較は以下の通りです。
- 使用ユニット:NS-2000はピュアベリリウム振動板の中・高域ドーム型を採用し、精緻な高域解像度が特徴です。4350はホーン型中高域とリング型トゥイーターで広い指向特性と高音圧を優先しています。高域の情報量と繊細さではNS-2000が優位、スタジオ的な音圧感と放射能ではJBL 4350が優位です。
- 音圧レベル:4350の95.5dBに対しNS-2000は90dB/W/mです。同一入力で約5.5dBの差があり、感度面でJBL 4350が大きく優位です。
- 外形寸法・重量:NS-2000は幅440×高さ752×奥行404mm・47kgと現実的なサイズです。設置性の高さと取り扱いやすさではYAMAHA NS-2000が圧倒的に有利です。
- 音質の方向性:NS-2000はピュアカーボンファイバーコーンとベリリウムドームによる透明感のある音です。4350はホーン型の力強い中高域と圧倒的な低域の量感が魅力となっています。室内楽・ボーカルの繊細な再生にはNS-2000、大編成・ロックの迫力にはJBL 4350が優位です。
JBL 4350とDIATONE DS-5000との比較
JBL 4350とDIATONE DS-5000との比較は以下の通りです。
- 再生周波数帯域:DS-5000は20Hz〜60kHzと超広帯域再生を誇ります。4350は30Hz〜20kHz ±3dBと実用帯域での精度を重視した設計となっています。超高域再生の広さではDIATONE DS-5000が優位です。
- 振動板素材:DS-5000のD.U.D.ボロンダイアフラムは内部損失と剛性の両立が特徴です。4350のアルミ合金ダイアフラム(2440)はホーン型による高効率駆動を優先した設計で、方向性が異なります。中高域の低歪再生と透明感ではDS-5000のボロン振動板が優位です。
- 音圧レベル:4350の95.5dBに対しDS-5000は93dB/W/mです。高効率駆動ではJBL 4350が約2.5dB優位であり、より少ない出力のアンプでも余裕ある鳴らしやすさを持っています。
- 音質の方向性:DS-5000はアラミッドハニカムウーファーによる低音の正確さと、ボロンドームの透明な中高域が持ち味です。4350はホーン型の豊かな広がりと圧倒的スケール感が特徴となっています。総合的な解像度とフラット特性ではDS-5000、スタジオ的な迫力と存在感ではJBL 4350が優位です。
JBL 4350とヴィンテージアンプとの組み合わせ


JBL 4350は高感度・大許容入力という特性上、強力なパワーアンプとの組み合わせでその真価を発揮します。ここでは、同時代を代表するヴィンテージパワーアンプ3機種との組み合わせを解説します。
JBL 4350とLUXMAN M-6000との組み合わせ
JBL 4350とLUXMAN M-6000との組み合わせは以下の通りです。
- 互換性:M-6000は300W+300W(8Ω)の大出力パワーアンプです。1975年発売と4350と同時代の機種であり、50万円超の価格帯同士で音楽的方向性も合致します。パラレル・トリプル・プッシュプル出力回路による安定した大電流供給で4350の低域側4Ω負荷にも十分対応します。
- 音質の向上:M-6000の重厚な大型電源部と左右独立電源設計が4350の豊かな低域を確実に支えます。大型VUメーターとLEDピークインジケーターによる出力の視認性も高く、スタジオライクな操作感でペアリングできます。
- おすすめの音楽ジャンル:クラシック大編成オーケストラ、ジャズビッグバンドとの相性が抜群です。両機の豊かな物量と余裕あるダイナミックレンジが、スケールの大きな音楽表現をそのまま再現します。
JBL 4350とTechnics SE-A3との組み合わせ
JBL 4350とTechnics SE-A3との組み合わせは以下の通りです。
- 互換性:SE-A3は4Ω負荷時に320W+320Wの出力を発揮します。4350の低域側インピーダンス(4Ω)に完全対応しており、ダンピングファクター120の高い制動力が2基のウーファーをしっかりと制御します。
- 音質の向上:SE-A3のニュークラスA回路による全高調波歪率0.001%という超低歪特性が、4350のホーン型中高域ユニットの透明感と解像度を最大限に引き出します。SN比123dBの静粛性も、95.5dBという高感度設計の4350を静かな曲でも鮮明に鳴らします。
- おすすめの音楽ジャンル:ジャズ、クラシック室内楽、アコースティックボーカルとの組み合わせに最適です。低歪アンプが4350の中高域の色づけを排除し、音楽の情報量をダイレクトに届けます。
JBL 4350とYAMAHA B-6との組み合わせ
JBL 4350とYAMAHA B-6との組み合わせは以下の通りです。
- 互換性:B-6は200W+200W(8Ω)の出力とダンピングファクター200以上という驚異的な制動力を備えます。4350の95.5dBという高感度と組み合わせることで、余裕あるヘッドルームを確保した駆動が可能です。
- 音質の向上:B-6のX増幅とX電源が実現するDF 200以上の精密な制動力が4350の2基のウーファーの動きをキレよくコントロールします。SN比127dB以上という高静粛性が、リング型トゥイーター2405の繊細な超高域再生をしっかりとバックアップします。
- おすすめの音楽ジャンル:ロック、フュージョン、ポップスに最適な組み合わせです。B-6の高速応答性が4350の低域のタイト感を増し、エレキギターやドラムの力強さをダイレクトに引き立てます。
まとめ
JBL 4350は、1973年発売の4ウェイ5スピーカー・バスレフ型フロアスピーカーです。38cmウーファー2基を中心とした5ユニットの精密設計と、マルチアンプ対応の先進的な構成により、スタジオモニターの最高峰として長く現役であり続けました。
1台¥993,800という価格と110kgの重量は、現代でも取り扱いに専門知識を要しますが、それゆえにヴィンテージオーディオ市場での希少性と価値も高く保たれています。バイアンプ運用でその真価が引き出されますが、パッシブ接続でも4350の圧倒的な存在感を十分に体感できます。
最後まで読んでいただきありがとうございました
JBL 4350の詳細スペック一覧
| JBL 4350のスペック詳細 | |
|---|---|
| 方式 | 4ウェイ・5スピーカー・バスレフ方式・フロア型 |
| 使用ユニット | 低域用:38cmコーン型(2230A)×2 中低域用:30cmコーン型(2202A) 中高域用:ホーン型(2440+2311+2308) 高域用:リング型(2405) |
| 周波数特性 | 30Hz〜20kHz ±3dB |
| 指向特性(12kHzまで、-3dB以内) | 水平方向:60° 垂直方向:30° |
| 許容入力(連続プログラム) | 250Hz以下:200W(4Ω) 250Hz以上:100W(8Ω) |
| インピーダンス | 250Hz以下:4Ω 250Hz以上:8Ω |
| 音圧レベル | 95.5dB(新JIS) 110dB SPL(許容入力1/2ピンクノイズ、10feet) 126dB SPL(許容入力1/2プログラム、10feet) |
| 感度 | 86dB(SPL、10feet、入力1W) 46.5dB(SPL、30feet、入力1mW) |
| 第3次高調波歪率 | 1%以下(108dB SPL、10feet、33Hz〜1.2kHz) 0.6%以下(101dB SPL、10feet、1.2kHz〜5kHz) |
| クロスオーバー周波数 | 低域:250Hz(12dB/oct) 中高域:1.1kHz、9kHz |
| エンクロージャー容積 | 269L(2202A用エンクロージャー34L含む) |
| 外形寸法 | 幅1,210×高さ890×奥行510mm |
| 重量 | 110kg(1台、1975年以降) 125kg(1973年カタログ記載) |
| 発売年 | 1973年 |
| 定価 | ¥993,800(4350、1台) / ¥1,107,900(4350WX、1台) |
