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DENON PMA-S10は、ヴィンテージなプリメインアンプです。
本記事では、その魅力を特徴やおすすめのヴィンテージ音楽機器との組み合わせなど、徹底解説します。
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DENON(デノン)PMA-S10の概要と特徴
DENON(デノン)PMA-S10のスペック | |
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<パワーアンプ部> | |
定格出力 | 100W+100W(4Ω) 50W+50W(8Ω、20Hz~20kHz) |
全高調波歪率 | 0.07%(1kHz、8Ω) |
スピーカー出力端子 | 4Ω~16Ω |
<プリアンプ部> | |
入力感度/インピーダンス | Phono MM:2.5mV/47kΩ Phono MC:200μV/100Ω Line:150mV/25kΩ |
イコライザーアンプ出力 | Rec Out:定格出力150mV |
RIAA偏差 | Phono:20Hz~20kHz ±0.3dB |
<総合> | |
SN比 | Phono MM:91dB Phono MC:76dB Line:102dB |
外形寸法 | 幅434x高さ137x奥行365mm |
重量 | 15.2kg |
DENON PMA-S10は1996年ごろに発売したプリメインアンプです。
トーン回路を信号経路から完全に分離してストレートな再生を可能にする、トーンデフィートスイッチを搭載しています。
では、以下からDENON PMA-S10の特徴を解説します。
①:増幅素子には大電流型増幅素子UHC MOSを採用
DENON PMA-S10の増幅素子には、大電流型増幅素子UHC MOSが採用されています。
大電流型増幅素子UHC MOSってなに?
一言で解説するのは難しいので、以下で詳しく解説します。
プリメインアンプに「大電流型増幅素子UHC MOS(Ultra High Current MOS)」が採用される理由は、その高い電流供給力と音質的なメリットにあります。
UHC MOSはバイポーラトランジスタと同等以上の電流供給力を持ち、さらにMOS FET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)の音質的な利点も併せ持っています。
MOS FET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)は、金属-酸化物-半導体のフィールド効果トランジスタという意味で、電子機器や集積回路に広く使用される半導体素子の一つです。
オーディオ機器においては、MOS FETはその高い入力インピーダンスと線形な特性から、クリアで自然な音質を提供するとされています。
特に高周波数域での性能が優れているため、広い周波数レンジで均一な応答が得られます。
UHC MOSは電流供給力が非常に高いため、音楽信号のダイナミクスをしっかりと再現することができます。
これにより、音楽が持つエネルギーと情熱をそのまま伝えることが可能です。
また、MOS FETの持つ音質的なメリットとして、クリアで自然な音質が挙げられます。
これらの特性が組み合わさることで、高い音質が実現されます。
さらに、このUHC MOSを最大限に活かすためにカスコードブートストラップ方式が採用されています。
カスコードブートストラップ方式は、電子回路において特にアンプ(増幅器)の設計に用いられる高度な技術の一つです。この方式は、増幅素子の性能を最大限に引き出す目的で採用されます。
さらに、カスコードブートストラップ方式は、電力増幅段に対して理想的な負荷を提供します。これにより、増幅器の線形性が向上し、歪みが低減します。また、高周波数での性能も向上するため、広い周波数レンジで高品質な信号を得ることができます。
カスコードブートストラップ方式により、電力増幅段への理想的な負荷が実現されます。
具体的には、信号の歪みを最小限に抑えつつ、高い出力が可能となります。
これにより、シンプルかつストレートな回路構成が可能となり、余計な部品や処理が省かれます。
②:電源部には大型パワートランスと大型ブロックコンデンサーを採用
DENON PMA-S10の電源部には、大型パワートランスと大型ブロックコンデンサーが採用されています。
まず、パワートランスは電源から供給される電力を適切なレベルに変換する役割を果たします。
大型のものを採用することで、より多くの電力を効率よく供給することが可能となります。
これにより、アンプが要求する電力を確実に供給し、安定した動作と高品質な音響出力を実現します。
以下は、大型パワートランスを採用する利点です。
- 安定した電力供給:大型のパワートランスは、より多くの電力を効率よく供給できます。これにより、アンプの動作が安定します。
- 高品質な音響出力:安定した電力供給により、音質が向上します。特に、低域の再生能力が高まり、音楽の細部まで忠実に再生することが可能です。
- 電源ノイズの低減:大型パワートランスは、電源ノイズや外部からの干渉を効果的に排除する能力があります。これにより、クリアで自然な音質が得られます。
そして、ブロックコンデンサーは、電源からの電流を一時的に蓄え、必要な瞬間に供給する役割を果たします。
大型のブロックコンデンサーを採用することで、より多くの電力を蓄えることができます。
これが特に重要なのは、音楽のダイナミックレンジが大きい場合や、低音を強調するような場合です。
大型ブロックコンデンサーによって、これらの音響情報を失わずに再生することが可能となります。
③:焼結合金インシュレーターをシャーシに直接固定
DENON PMA-S10は、焼結合金インシュレーターをシャーシに直接固定しています。
焼結合金インシュレーターってなに?
焼結合金インシュレーターとは、特定の金属粉末を高温で焼結(熱処理)して作られた絶縁体の一種です。
このインシュレーターは、電気的なノイズや振動を抑制するために使用されます。
シャーシに直接固定することで、以下のようなメリットが得られます。
- 高い絶縁性能:焼結合金は非常に高い絶縁性能を持っています。これにより、内部の電子部品から発生する電気的なノイズや干渉を効果的に防ぐことができます。
- 振動の抑制:シャーシに直接固定することで、機器自体の振動がインシュレーターによって吸収されます。これにより、音質に悪影響を与える振動が抑制されます。
- 熱の分散:焼結合金は熱伝導性も高く、シャーシに直接固定することで、内部の熱を効率よく分散させることができます。これは、機器の安定性と寿命に寄与します。
DENON(デノン)PMA-S10と他のヴィンテージアンプとの比較
当然ですが、ヴィンテージアンプはDENON PMA-S10だけではありません。
以下では
- ONKYO A-913
- SANSUI AU-α907
- TRIO KA-2200
との比較を解説しているので、興味のある方は参考にしてみてください。
DENON PMA-S10とONKYO A-913との比較
DENON PMA-S10とONKYO A-913との比較は以下の通りです。
- 実効出力:DENONは100W+100W(4Ω)、50W+50W(8Ω)ですが、ONKYOは75W+75W(6Ω)、60W+60W(8Ω)です。DENONがわずかに高い出力を持っています。
- 混変調歪率:DENONは0.07%(1kHz、8Ω)、ONKYOは0.06%です。ONKYOがわずかに低い混変調歪率を持っています。
- 入力感度/インピーダンス:DENONはPhono MM:2.5mV/47kΩ、Phono MC:200μV/100Ω、Line:150mV/25kΩです。ONKYOはPhono MM:2.5mV/50kΩ、Phono MC:350μV/330Ω、CD、Tape Play、他:150mV/50kΩです。ONKYOが多少高いインピーダンスを持っています。
- SN比:DENONはPhono MM:91dB、Phono MC:76dB、Line:102dBです。ONKYOはPhono MM:83dB、Phono MC:65dB、CD、他:97dBです。DENONが全体的に高いSN比を持っているため、優れています。
- 消費電力:DENONは160W、ONKYOは115Wです。
- 重量:DENONは15.2kg、ONKYOは6.7kgです。ONKYOのほうが軽量なので、設置が容易です。
- 音質:DENONはUHC MOSとカスコードブートストラップ方式を採用しています。ONKYOはディスクリート回路とリニアスイッチング回路を採用しています。音質は主観的な要素が多いため、一概には言えませんが、両者ともに高度な技術を採用しています。
DENON PMA-S10とSANSUI AU-α907との比較
DENON PMA-S10とSANSUI AU-α907との比較は以下の通りです。
- 実効出力:DENON PMA-S10は100W+100W(4Ω)、50W+50W(8Ω)です。一方、SANSUI AU-α907は190W+190W(6Ω)、180W+180W(8Ω)と非常に高出力です。SANSUIの方が出力が高く、大きなスピーカーも駆動できます。
- 混変調歪率:DENON PMA-S10は全高調波歪率が0.07%、SANSUI AU-α907は混変調歪率が0.003%以下です。SANSUIの方が歪率が低く、よりクリアな音質を提供できます。
- 入力感度/インピーダンス:DENON PMA-S10はPhono MM:2.5mV/47kΩ、Phono MC:200μV/100Ω、Line:150mV/25kΩです。SANSUI AU-α907はNormal:1V/5kΩ、Balance:1V/5kΩです。SANSUIの方が入力感度が高く、より多くのオーディオソースに対応しています。
- ダンピングファクター:DENON PMA-S10のダンピングファクターは明示されていませんが、SANSUI AU-α907は100(6Ω)です。SANSUIの方がスピーカーの制御がしっかりしています。
- SN比:DENON PMA-S10はPhono MM:91dB、Phono MC:76dB、Line:102dBです。SANSUI AU-α907は120dB以上です。SANSUIの方がノイズが少なく、クリアな音質です。
- 消費電力:DENON PMA-S10は160W、SANSUI AU-α907は370Wです。SANSUIの方が消費電力が高いですが、それは高出力と引き換えです。
- 重量:DENON PMA-S10は15.2kg、SANSUI AU-α907は28.0kgです。SANSUIの方が重く、設置には注意が必要です。
- 音質:DENON PMA-S10はUHC MOSとカスコードブートストラップ方式を採用しており、繊細かつ力強い音質です。SANSUI AU-α907はα-Xバランスサーキットを採用しており、非常に高い解像度とダイナミクスを持っています。どちらも高い音質ですが、SANSUIはより高出力で、多機能です。
DENON PMA-S10とTRIO KA-2200との比較
DENON PMA-S10とTRIO KA-2200との比較は以下の通りです。
- 実効出力:DENON PMA-S10は100W+100W(4Ω)、50W+50W(8Ω)です。一方で、TRIO KA-2200は150W+150W(8Ω)となっています。TRIOの方が出力が高いため、大きなスピーカーを駆動する場合には有利です。
- 混変調歪率:DENON PMA-S10の全高調波歪率は0.07%ですが、TRIO KA-2200は0.003%と非常に低いです。この点ではTRIOが優れています。
- 入力感度/インピーダンス:両者ともPhono MMとMCに対応していますが、入力感度やインピーダンスには微妙な違いがあります。具体的な数値については、用途や接続する機器によって選ぶべきです。
- 負荷インピーダンス:DENON PMA-S10は4Ω~16Ω、TRIO KA-2200は8Ωとなっています。DENONの方が負荷インピーダンスの範囲が広いため、多様なスピーカーに対応可能です。
- SN比:TRIO KA-2200のSN比は最大で110dBと非常に高く、DENON PMA-S10は最大で102dBです。この点ではTRIOがわずかに優れています。
- 消費電力:DENON PMA-S10は160W、TRIO KA-2200は370Wとなっています。消費電力が少ないDENONがエコフレンドリーです。
- 重量:両者とも15kg前後であり、設置場所や持ち運びに大きな違いはありません。
- 音質:DENON PMA-S10はUHC MOSという大電流型増幅素子を採用しており、繊細かつ力強い音質を目指しています。一方、TRIO KA-2200はDLDサーキットとΣドライブ方式を採用しており、低歪率と高いダイナミクスを実現しています。音質は主観的な要素も多いため、個々の好みや用途によって選ぶべきです。
DENON(デノン)PMA-S10とヴィンテージスピーカーとの組み合わせ
以下では、DENON PMA-S10とヴィンテージスピーカーとの組み合わせを一部解説します。
DENON PMA-S10と組み合わせるヴィンテージスピーカーは、
- TANNOY Glenair
- YAMAHA NS-100M
- OPTONICA CP-5000
です。
興味のある方は参考にしてみてください。
DENON PMA-S10とTANNOY Glenairの組み合わせ
DENON PMA-S10とTANNOY Glenairの組み合わせは、以下のような結果が得られます。
- 互換性:DENON PMA-S10のスピーカー出力端子は4Ω~16Ωで、TANNOY Glenairの入力インピーダンスは8Ωです。これは非常に良いマッチングを示しています。また、PMA-S10の定格出力は100W+100W(4Ω)と50W+50W(8Ω)であり、Glenairの連続許容入力は135W(RMS)です。このことからも、両者は十分に互換性があると言えます。
- 音質の向上:DENON PMA-S10は、大電流型増幅素子UHC MOSとカスコードブートストラップ方式を採用しています。これにより、音質的なメリットと電流供給力の向上が図られています。一方で、TANNOY Glenairは高圧縮加工されたフマルチファイバー・ペーパーコーンと3.3cmドーム型ダイアフラムを採用しています。これらの特性が合致することで、低域から高域まで非常にバランスの取れた、豊かでクリアな音質を実現します。
- 機能の拡張:DENON PMA-S10にはPhonoイコライザーが搭載されており、MM/MCの両タイプに対応しています。これにより、アナログレコードからの再生も可能です。また、TANNOY Glenairはバイアンプ、バイワイヤリング駆動に対応しています。これにより、より高度なオーディオセットアップが可能となります。さらに、PMA-S10のトーンデフィートスイッチを用いることで、信号経路をシンプルに保ち、よりストレートな音質を楽しむことができます。
DENON PMA-S10とYAMAHA NS-100Mの組み合わせ
DENON PMA-S10とYAMAHA NS-100Mの組み合わせは、以下のような結果が得られます。
- 互換性:PMA-S10はスピーカー出力端子が4Ω~16Ωとなっており、NS-100Mのインピーダンスは6Ωです。この点から見ても、両者は非常に良い互換性を持っています。また、PMA-S10の定格出力は50W+50W(8Ω、20Hz~20kHz)であり、NS-100Mの定格入力は30W、最大入力は60Wです。この数値を考慮すると、アンプとスピーカーのパワーバランスも適切です。さらに、PMA-S10にはPhonoイコライザーが搭載されており、NS-100Mの高い出力音圧レベル(90dB/W/m)と相まって、高品質な音楽再生が可能です。
- 音質の向上:DENON PMA-S10は、大電流型増幅素子UHC MOSとカスコードブートストラップ方式を採用しています。これにより、音質的なメリットが多く、特に力強さと繊細さが高次元で両立されています。一方で、YAMAHA NS-100Mは低域から高域までバランスの良い音質を持っています。特に、7種類の粘弾性薬品をブレンドしたマルチコーティング剤を振動板に採用している点は注目です。この組み合わせによって、低音の深みと高音のクリアさが一層引き立ちます。
- 機能の拡張:PMA-S10にはトーンデフィートスイッチが搭載されており、トーンコントロールを使用しないときには、信号経路から完全に分離することができます。これにより、よりストレートな音質を楽しむことができます。また、NS-100Mには中音・高音のレベルコントロールが搭載されています。この機能を活かすことで、より多彩な音楽表現が可能になります。
DENON PMA-S10とOPTONICA CP-5000の組み合わせ
DENON PMA-S10とOPTONICA CP-5000の組み合わせは、以下のような結果が得られます。
- 互換性:PMA-S10はプリメインアンプであり、定格出力が100W+100W(4Ω)または50W+50W(8Ω)です。一方で、OPTONICA CP-5000は3ウェイ・3スピーカー・密閉方式のブックシェルフ型スピーカーで、最大許容入力が63W(MPO)であり、インピーダンスが8Ωです。このスペックを見る限り、両者は非常に良い互換性を持っています。特に、PMA-S10のスピーカー出力端子が4Ω~16Ωと幅広く対応しているため、CP-5000の8Ωのインピーダンスともマッチします。
- 音質の向上:PMA-S10はUHC MOSという大電流型増幅素子を採用しており、これがMOS FETの音質的なメリットとバイポーラトランジスタの電流供給力を兼ね備えています。一方、CP-5000は低域から高域まで各種の先進的なユニットを採用しています。特に、高域にはリボン型トゥイーターが搭載されており、これが非常に高い過渡特性と周波数特性を持っています。この組み合わせにより、低域の力強さと高域のクリアさが一体となり、非常にバランスの取れた音質を実現できます。
- 機能の拡張:PMA-S10にはPhonoイコライザーが搭載されており、MM/MCの両タイプに対応しています。また、トーンデフィートスイッチによって、トーンコントロールを使用しないときには信号経路から完全に分離することができます。一方で、CP-5000にはマルチアンプ再生用の端子が搭載されています。これにより、より高度なシステム構築が可能となります。また、CP-5000には中域と高域のレベルコントロールが搭載されているため、PMA-S10の機能と合わせて、非常に柔軟な音質調整が可能です。
DENON(デノン)PMA-S10を徹底解説!【他のアンプとの比較】のまとめ
本記事では以下を解説しました。
最後まで読んでいただきありがとうございました