Lo-D HA-1100を徹底解説!【他のヴィンテージアンプとの比較】

Lo-D HA-1100を徹底解説!【他のヴィンテージアンプとの比較】

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Lo-D HA-1100は、ヴィンテージなプリメインアンプです。

本記事では、その魅力を特徴やおすすめのヴィンテージ音楽機器との組み合わせなど、徹底解説します。

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Lo-D HA-1100の概要と特徴

Lo-D HA-1100の概要と特徴
Lo-D HA-1100のスペック
<パワーアンプ部>
回路方式差動2段全段直結エミッタ接地インバーテッドダーリントン
純コンプリメンタリーOCL
ダイナミックパワー(IHF)220W(8Ω)
全高調波歪率0.1%(実効出力時)
0.006%(1/2実効出力時、1kHz)
入力感度/インピーダンス1V/70kΩ
出力端子A、B、C:4Ω~16Ω
A+B、A+C:8Ω~16Ω
ヘッドホン端子:4Ω~16Ω
<プリアンプ部>
回路方式イコライザーアンプ:差動1段3段直結、FET使用
コントロールアンプ:NF形、初段FET使用
入力感度/インピーダンスPhono1:2mV/50kΩ
Phono2:1.6~6mV/50kΩ(連続可変)
Tuner、Aux1、2、Tape PB1、2:100mV/50kΩ
Phono最大許容入力Phono1:430mV(RMS、1kHz)
Phono2:330~1300mV(RMS、1kHz)
<総合>
定格消費電力(電気用品取締法)200W
外形寸法幅468x高さ188x奥行395mm
重量18kg

Lo-D HA-1100は1975年に発売したプリメインアンプです。

ボリュームには22接点スイッチ式アッテネーターを採用しています。

では、以下からLo-D HA-1100の特徴を解説します。

①:差動2段定電流駆動エミッタ設置インバーテッドダーリントン純コンプリメンタリーOCL回路構成を採用

Lo-D HA-1100は、差動2段定電流駆動エミッタ設置インバーテッドダーリントン純コンプリメンタリーOCL回路構成を採用しています。

それは一体なんですが?

一言で解説するのは不可能なので、言葉を分解しながら解説します。(結構長文です)

  1. 差動2段2つの入力信号の差(差動信号)を増幅する回路です。この回路は、一般的には2つのトランジスタを用いて構成されます。これらのトランジスタは、同じ電流源から駆動され、その結果として出力される信号は入力信号の差に比例します。「差動2段」とは、このような差動アンプを2段階連結させたものを指します。1段目の差動アンプが増幅した信号は、2段目の差動アンプでさらに精緻な増幅が行われます。この2段階の増幅によって、より高い精度と線形性が得られます。差動アンプの最大の利点の一つは、ノイズ耐性が非常に高いことです。
  2. 定電流駆動:一般的なアンプでは、入力信号に応じて電流が変動します。しかし、定電流駆動では、アクティブな素子(通常はトランジスタ)が一定の電流で駆動されるため、その動作は非常に安定しています。この安定性が、高い線形性と低い歪みをもたらします。
  3. エミッタ設置:トランジスタの一部である「エミッタ」が特定の配置や接続に設置されることを指します。トランジスタには主に三つの端子があります:ベース、コレクタ、そしてエミッタです。エミッタは、トランジスタの動作において電流を供給する役割を果たします。このエミッタ端子の設置と接続方法が、トランジスタの性能と回路全体の特性を決定します。
  4. インバーテッドダーリントン:通常のダーリントンペアでは、二つのトランジスタが直列に接続されていますが、インバーテッドダーリントンではこの接続が逆になっています。インバーテッドダーリントンは、高い入力インピーダンスと低い出力インピーダンスを持つため、バッファやインピーダンス変換によく用いられます。また、この配置によって、特定の周波数帯域での性能が向上する場合もあります
  5. 純コンプリメンタリー:電子回路、特にアンプ(増幅器)において、NPN型とPNP型のトランジスタを対にして使用する設計手法を指します。この設計手法の最大の利点は、線形性の向上です。線形性が高いとは、入力信号に対する出力信号が一定の比率で増幅されるということです。これにより、音質や信号品質の歪みが最小限に抑えられます。
  6. OCL(Output Capacitor-Less)出力側にコンデンサを使用しない電子回路の設計手法を指します。出力コンデンサがないことで信号経路が短くなり、信号の歪みや位相ずれが減少します。OCL設計は、高周波信号に対しても優れた性能を発揮します。出力コンデンサがないため、高周波成分がより正確に伝送されます。

上記のように、Lo-D HA-1100に採用されている「差動2段定電流駆動エミッタ設置インバーテッドダーリントン純コンプリメンタリーOCL回路構成」というのは、それぞれの要素がうまく組み合わさっている構成です。

②:イコライザー段には初段にFET差動アンプを用いた3段構成を採用

Lo-D HA-1100のイコライザー段の初段には、FET差動アンプを用いた3段構成が採用されています。

これはイコライザーの初段にFET(Field-Effect Transistor)差動アンプを用い、全体として3段の構成を取っているという意味合いです。

FET差動アンプは、高い入力インピーダンスと低いノイズを特長としています。

これにより、信号源からの信号を高品質で増幅することが可能です。

ちなみに「FET」は「フィールド効果トランジスタ」の略で、電界によって電流を制御するタイプのトランジスタです。

さらに、FET差動アンプを初段に採用することで、高品質な音響性能が期待されます。

特に、高い入力インピーダンスと低ノイズにより、微弱な信号でもクリアに増幅することができます。

Lo-D HA-1100と他のヴィンテージアンプとの比較

Lo-D HA-1100と他のヴィンテージアンプの比較

当然ですが、ヴィンテージアンプはLo-D HA-1100だけではありません。

以下では

  • Marantz PM-78
  • LUXMAN L-45A
  • Pioneer A-D1

との比較を解説しているので、興味のある方は参考にしてみてください。

Lo-D HA-1100とMarantz PM-78との比較

Lo-D HA-1100とMarantz PM-78との比較は以下の通りです。

  • 実効出力:Lo-D HA-1100は、20Hz~20kHzで両ch駆動時に90W+90W(4Ω)、80W+80W(8Ω)の出力があります。一方、Marantz PM-78は、20Hz~20kHzで両ch動作時にAクラス動作で25W+25W(8Ω)、ABクラス動作で190W+190W(4Ω)となります。Marantz PM-78の方が出力範囲が広いです。
  • SN比:Lo-D HA-1100は100dB以上、Marantz PM-78はHigh Levelで109dBです。Marantz PM-78の方がわずかに優れています。
  • 消費電力:Lo-D HA-1100は200W、Marantz PM-78は160Wです。消費電力が少ないMarantz PM-78がエコフレンドリーです。
  • 重量:Lo-D HA-1100は18kg、Marantz PM-78は12.3kgです。
  • 音質:Lo-D HA-1100は差動2段全段直結エミッタ接地インバーテッドダーリントン純コンプリメンタリーOCL回路を採用しています。Marantz PM-78はクラスA方式を採用しています。音質は主観的な要素も多いため、一概には言えませんが、両者とも高品質な音を提供しています。

Lo-D HA-1100とLUXMAN L-45Aとの比較

Lo-D HA-1100とLUXMAN L-45Aとの比較は以下の通りです。

  • 実効出力:Lo-D HA-1100は最大で110W(4Ω)の出力がありますが、LUXMAN L-45Aは65W(8Ω)です。出力面ではLo-D HA-1100が優れています。
  • 混変調歪率:Lo-D HA-1100は0.03%、LUXMAN L-45Aは0.009%と非常に低い値を示しています。この点ではLUXMAN L-45Aが優れています。
  • 入力感度/インピーダンス:Lo-D HA-1100は1V/70kΩ、LUXMAN L-45AはPhono MMで1.5mV/50kΩです。この点ではLo-D HA-1100が多少高い感度を持っています。
  • SN比:Lo-D HA-1100は100dB以上、LUXMAN L-45Aも100dB以上と高い値を示しています。
  • 消費電力:Lo-D HA-1100は200W、LUXMAN L-45Aは150Wと、少ない消費電力で高性能を発揮するLUXMAN L-45Aが優れています。
  • 重量:Lo-D HA-1100は18kg、LUXMAN L-45Aは10.5kgと、より軽量です。
  • 音質:音質は主観的な要素も多いですが、Lo-D HA-1100は低歪率と高い出力で力強い音を、LUXMAN L-45Aは高い裸特性と低歪率でクリアな音を提供します。

Lo-D HA-1100とPioneer A-D1との比較

Lo-D HA-1100とPioneer A-D1との比較は以下の通りです。

  • 実効出力:Lo-D HA-1100は、20Hz~20kHzで90W+90W(4Ω)、80W+80W(8Ω)の出力があります。一方、Pioneer A-D1は、45W+45W(4Ω)、35W+35W(8Ω)です。Lo-D HA-1100の方が出力が高いです。
  • 入力感度/インピーダンス:Lo-D HA-1100は1V/70kΩ、Pioneer A-D1はPhono MM:2.8mV/50kΩとなっています。入力感度とインピーダンスは用途によって重要なので一概には言えませんが、Lo-D HA-1100の方が高いインピーダンスを持っています。
  • 負荷インピーダンス:Lo-D HA-1100は4Ω~16Ω、Pioneer A-D1は4Ω~16Ωまたは8Ω~32Ωとなっています。この点ではPioneer A-D1が多少柔軟です。
  • SN比:Lo-D HA-1100は100dB以上、Pioneer A-D1は106dBです。この点ではPioneer A-D1がわずかに優れています。
  • 消費電力:Lo-D HA-1100は200W、Pioneer A-D1は100Wです。消費電力が少ない方がエコです。
  • 重量:Lo-D HA-1100は18kg、Pioneer A-D1は4.7kgです。設置の容易さを考慮すると、Pioneer A-D1が優れています。
  • 音質:Lo-D HA-1100は高い出力と低い歪率で音質が高いとされています。Pioneer A-D1も高い音質を持っていますが、出力が低めです。

Lo-D HA-1100とヴィンテージスピーカーとの組み合わせ

Lo-D HA-1100とヴィンテージスピーカーとの組み合わせ

以下では、Lo-D HA-1100とヴィンテージスピーカーとの組み合わせを一部解説します。

Lo-D HA-1100と組み合わせるヴィンテージスピーカーは、

  • JMlab UTOPIA
  • JBL 4401
  • Wharfedale TSR108.2

です。

興味のある方は参考にしてみてください。

Lo-D HA-1100とJMlab UTOPIAの組み合わせ

Lo-D HA-1100とJMlab UTOPIAの組み合わせは、以下のような結果が得られます。

  • 互換性:Lo-D HA-1100は、高い出力能力と多機能性を持つプリメインアンプです。一方で、JMlab UTOPIAは、3ウェイ・4スピーカー・バスレフ方式のフロア型スピーカーであり、高い音質を持っています。特に、HA-1100の出力端子がA、B、C:4Ω~16Ωと多様であり、JMlab UTOPIAの公称インピーダンスが6Ωであるため、この二つは非常によく合います。
  • 音質の向上:Lo-D HA-1100は、低歪率と高いダイナミックレンジを持っています。特に、その差動2段全段直結エミッタ接地インバーテッドダーリントン純コンプリメンタリーOCL回路構成は、低歪率を実現しています。一方で、JMlab UTOPIAは、独自のMVFテクノロジーとポリケブラー振動板を採用しており、これが相まって非常に高い再生能力と音質を持っています。
  • 機能の拡張:Lo-D HA-1100は、多くの入力端子と出力端子を持っており、多機能です。例えば、Phono、Tuner、Auxなど多様な入力が可能です。また、ヘッドホン端子も備えています。これにより、JMlab UTOPIAと組み合わせることで、より多くのオーディオソースから高品質な音を楽しむことができます。さらに、HA-1100にはトーンコントロールやラウドネスコントロールなどの機能も備えているため、UTOPIAの音質を更にカスタマイズすることが可能です。

Lo-D HA-1100とJBL 4401の組み合わせ

Lo-D HA-1100とJBL 4401の組み合わせは、以下のような結果が得られます。

  • 互換性:Lo-D HA-1100のプリメインアンプの出力能力が90W+90W(4Ω)から100W+100W(4Ω)と非常に高く、JBL 4401の許容入力が60Wであるため、十分なパワーを供給することができます。また、JBL 4401のインピーダンスが8Ωであり、Lo-D HA-1100が4Ω~16Ωのスピーカーに対応しているため、互換性に問題はありません。
  • 音質の向上:Lo-D HA-1100は、低歪率と高いダイナミックレンジを持つプリメインアンプであり、JBL 4401は低域と高域の再生能力が高いスピーカーです。特に、Lo-D HA-1100のトーンコントロール機能とJBL 4401の高性能なウーファーとトゥイーターが相まって、非常にクリアでバランスの良いサウンドを実現します。
  • 機能の拡張:Lo-D HA-1100には多数の入力端子と出力端子があり、JBL 4401にはマウントフレームなどの別売オプションが存在します。これにより、システムの拡張性が高く、さまざまなオーディオ機器と組み合わせることが可能です。また、Lo-D HA-1100のヘッドホン端子やPhono端子、JBL 4401のウォールマウントやコンソールマウントなど、多機能な設定が可能です。

Lo-D HA-1100とWharfedale TSR108.2の組み合わせ

Lo-D HA-1100とWharfedale TSR108.2の組み合わせは、以下のような結果が得られます。

  • 互換性:Lo-D HA-1100は、4Ω~16Ωのスピーカーに対応しており、Wharfedale TSR108.2は8Ωのインピーダンスを持っています。これにより、両者は電気的に適切にマッチングされ、安定した性能を発揮します。また、HA-1100の最大出力は100W+100W(4Ω)であり、TSR108.2の最大入力は100Wですので、アンプからの出力がスピーカーの耐久性を超えることはありません。
  • 音質の向上:Lo-D HA-1100は、差動2段全段直結エミッタ接地インバーテッドダーリントン純コンプリメンタリーOCL回路構成を採用しており、低歪率を実現しています。一方で、Wharfedale TSR108.2は、低域にコーン型ウーファー、高域にソフトドーム型トゥイーターを搭載しています。この組み合わせにより、低域から高域までバランスの取れた、クリアで豊かな音質を実現します。特に、HA-1100の高いS/N比と、TSR108.2の高い出力音圧レベルが相まって、非常に高い音質が得られます。
  • 機能の拡張:Lo-D HA-1100には、多数の入力端子とコントロール機能があり、Wharfedale TSR108.2にはアンビエンス・コントロールが搭載されています。これにより、より多くのオーディオソースに対応し、リスニング環境に合わせた細かな音質調整が可能です。特に、HA-1100のトーンコントロールとTSR108.2のアンビエンス・コントロールを組み合わせることで、部屋の特性や音源に応じて最適な音場を作り出すことができます。

Lo-D HA-1100を徹底解説!【他のヴィンテージアンプとの比較】のまとめ

本記事では以下を解説しました。

最後まで読んでいただきありがとうございました

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