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TRIO KA-7300は、1975年発売のヴィンテージなプリメインアンプです。
本記事では、その魅力を特徴やおすすめのヴィンテージ音楽機器との組み合わせなど、徹底解説します。

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TRIO KA-7300の概要と特徴

| TRIO KA-7300のスペック | |
|---|---|
| 発売年 | 1975年 |
| 定価 | 65,000円 |
| 型式 | インテグレーテッドアンプ |
| 定格出力 | 65W+65W(8Ω、20Hz~20kHz) |
| 全高調波歪率 | 0.04%(1W出力時、20Hz~20kHz、8Ω) |
| SN比 | 110dB(IHF、Aカーブ) |
| 重量 | 14kg |
TRIOが1975年に世に送り出したKA-7300。¥65,000という当時の中級機価格帯にありながら、左右チャンネルに独立電源トランスを配したセパレート電源方式、入力コンデンサーを追放したICL方式イコライザー、32接点アッテネーターボリュームと、当時の上位機にも引けを取らない設計思想を詰め込んだ意欲作です。1970年代の日本のオーディオ産業が最も勢いを持っていた時代の息吹が、この1台に凝縮されています。
TRIO KA-7300を語るうえで欠かせない3つのポイントを順番に見ていきましょう。
Point①|左右独立セパレート電源とダイナミッククロストーク解消
KA-7300の電源部において最も注目すべき設計はどこにあるのでしょうか。その答えは、左右チャンネルに独立した電源トランスを搭載したセパレート電源方式にあります。
和太鼓のような低域に集中する大きな過渡的信号が片チャンネルに入力されると、共通電源の電圧が揺さぶられ、もう一方のチャンネルにダイナミッククロストークと呼ばれる歪が発生します。KA-7300はL/R独立の電源トランスと10,000μFの大容量電解コンデンサー4本によって、この原理的な問題を根本から解消しています。

ダイナミッククロストークって何ですか?
LチャンネルとRチャンネルが電源を共有している場合、一方に大きな信号が入力されると電源電圧が変動し、その影響がもう一方のチャンネルの信号に混入する現象です。特に低域の大電流が流れる場面で顕著に現れます。L/R独立の電源トランスを使うことで両チャンネルの電源が互いに独立し、この干渉が原理的に発生しなくなります。
トーンコントロール部でもBass回路とTreble回路を分離・独立させることで相互干渉を防いでいます。新設計のロジックAND回路採用によりBass・Treble両コントロールの完全なトーンジャンプが可能で、トーンジャンプ時に位相が反転するという問題も解消されています。
- L/Rチャンネル独立電源トランス搭載
- 10,000μF電解コンデンサー4本によるダイナミッククロストーク抑制
- Bass/Treble回路独立分離 + ロジックAND回路採用
- トーンジャンプ時の位相反転問題を解消
Point②|ICL方式イコライザーとダイレクトコネクション
KA-7300のイコライザー段には、FET差動増幅3段直結方式のICL(Input Capacitor Less)回路を採用しています。初段増幅にFETを用いることで入力コンデンサーを完全に追放し、カートリッジからの信号をダイレクトに増幅素子へ伝えることを実現しています。入力コンデンサーが存在していた従来設計では、このコンデンサーが位相特性や過渡応答を劣化させていました。
さらに入力端子とイコライザーを直結したダイレクトコネクションを採用しており、プレーヤーからの低レベル信号が配線の浮遊容量の影響を受けないよう設計されています。FET差動増幅3段直結回路を±2電源で駆動することで優れた特性を確保し、1W出力時のTHDは0.04%という当時の中級機として優秀な歪率を達成しています。
- 入力コンデンサー追放のICL方式 + FET差動増幅3段直結
- 入力端子とイコライザーの直結(ダイレクトコネクション)
- ±2電源駆動で低歪率・高安定動作を実現
Point③|全段直結OCL回路と32接点アッテネーターボリューム
パワーアンプ部には初段差動増幅+定電流駆動A級増幅+純コンプリメンタリー・パワーダーリントンブロックによる全段直結OCL回路を採用しています。出力コンデンサーを排除したOCL(Output Capacitor Less)設計により、超低域から超高域までNFBを均等にかけることができ、出力コンデンサーによる歪や位相劣化を根本から排除しています。
特にパワーダーリントンブロックには、ファイナルとドライブ段のトランジスタにリミッタープロテクションを内蔵したTRIOのオリジナルデバイスを採用しています。このオリジナルデバイスにより高パワーと安定性を両立し、スピーカーを確実に保護する設計となっています。
ボリューム部には32接点のアッテネーターボリュームを採用しており、一般的な連続可変型ボリュームの摺動部に生じるノイズや特性劣化を排除しています。また-20dBのアクティブミューティングはトーンコントロール部のNFB量をコントロールする方式を採用しており、ミューティング時も音質への影響を最小限に留めています。
- 全段直結OCL回路(出力コンデンサー排除)
- 純コンプリメンタリー・パワーダーリントンブロック(TRIOオリジナルデバイス)
- 32接点アッテネーターボリューム採用
- -20dBアクティブミューティング搭載
TRIO KA-7300と他のヴィンテージプリメインアンプとの比較


TRIO KA-7300と他のヴィンテージプリメインアンプとの比較は以下の通りです。
| 項目 | TRIO KA-7300 | Technics SU-8600 | SANSUI AU-999 | TRIO KA-7500 |
|---|---|---|---|---|
| 発売年 | 1975年 | 1975年 | 1970年2月 | 1975年 |
| 定価 | 65,000円 | 79,800円 | 85,000円 | 89,800円 |
| 定格出力(8Ω、両ch) | 65W+65W | 73W+73W | 80W+80W | 80W+80W |
| 全高調波歪率 | 0.1%(定格出力時) | 0.08% | 0.4% | 0.1%(定格出力時) |
| ダンピングファクター | 30 | 50(8Ω) | 45(8Ω) | 30 |
| 重量 | 14kg | 12.7kg | 17.5kg | 16kg |
| 消費電力 | 170W | 180W | 370W | 180W |
TRIO KA-7300とTechnics SU-8600との比較
TRIO KA-7300とTechnics SU-8600との比較は以下の通りです。
- 定格出力:SU-8600は73W+73W(8Ω)、KA-7300は65W+65W(8Ω)と出力の余裕ではSU-8600が上回ります。SU-8600は15,000μFの大容量コンデンサーと±4電源の安定化電源による動特性向上を特長としています。
- 全高調波歪率:SU-8600は0.08%、KA-7300は定格出力時0.1%(1W時0.04%)です。実用レベルの歪率ではほぼ互角で、SU-8600の±6電源方式とKA-7300のICL方式イコライザーはそれぞれ異なるアプローチで歪低減を図っています。
- ダンピングファクター:SU-8600はDF 50(8Ω)、KA-7300はDF 30とスピーカー制動力ではSU-8600が有利で、低域の引き締まりに差が出ます。
- 価格・電源設計:KA-7300(¥65,000)はSU-8600(¥79,800)より約15,000円安価です。同年発売でより低価格のKA-7300がL/R独立電源トランスを搭載している点はコストパフォーマンス上の優位で、ダイナミッククロストーク対策においてSU-8600に引けを取りません。
TRIO KA-7300とSANSUI AU-999との比較
TRIO KA-7300とSANSUI AU-999との比較は以下の通りです。
- 定格出力:AU-999は80W+80W(8Ω)、KA-7300は65W+65W(8Ω)と出力ではAU-999が有利ですが、AU-999は1970年2月発売とKA-7300より約5年古い設計となります。時代的な回路技術の進歩を踏まえると単純な出力比較以上の意味があります。
- 全高調波歪率:KA-7300は定格出力時0.1%(1W時0.04%)、AU-999は0.4%(定格出力時)です。低歪率ではKA-7300が大きく優位で、5年間の技術革新がこの数値差に明確に表れています。
- イコライザー設計:KA-7300はICL方式(入力コンデンサー追放)+FET差動増幅3段直結を採用しており、AU-999の従来型NF型より位相特性・過渡応答・ノイズ面で音質的な進歩を遂げた設計となっています。
- 消費電力・重量:AU-999は370W・17.5kgとKA-7300の170W・14kgを大幅に上回ります。設置効率とランニングコストではKA-7300が明確に有利で、日常使いの扱いやすさでも優位です。
TRIO KA-7300とTRIO KA-7500との比較
TRIO KA-7300とTRIO KA-7500との比較は以下の通りです。
- 定格出力:KA-7500は80W+80W(8Ω)、KA-7300は65W+65W(8Ω)と出力の余裕では同ブランド上位機KA-7500が有利です。KA-7500は4Ω負荷で110W+110W、ミュージックパワー240W(8Ω)という大電力設計が特長です。
- イコライザー・電源:KA-7500は15,000μFの大容量コンデンサーを2本使用しANDサービス安定化電源を採用。KA-7300はL/R独立電源トランスで対抗します。ダイナミッククロストーク対策の方向性ではKA-7300のL/R独立電源が優れた設計で、上下の価格差に見合う優位点となっています。
- ボリューム設計:KA-7500が22接点アッテネーターを採用しているのに対し、KA-7300は32接点アッテネーターを採用しています。接点数の多さではKA-7300が上回っており、音量調整の精度と音質面でKA-7300の設計が光ります。
- 価格:KA-7300(¥65,000)はKA-7500(¥89,800)より¥24,800安価です。コストパフォーマンスではKA-7300が有利で、L/R独立電源と32接点ボリュームをより安価に入手できる点がKA-7300ならではの魅力です。
TRIO KA-7300とヴィンテージスピーカーとの組み合わせ


TRIO KA-7300とYAMAHA NS-1000Mとの組み合わせ
TRIO KA-7300とYAMAHA NS-1000Mとの組み合わせは以下の通りです。
- 互換性:YAMAHA NS-1000M(1974年~1997年、¥119,000/台)はインピーダンス8Ω・最大許容入力100W・出力音圧90dB/W/mの3ウェイ密閉型スピーカーです。KA-7300の65W出力は最大許容100Wを余裕で下回るため、安全かつ理想的な組み合わせとなります。1974年発売のNS-1000Mと1975年発売のKA-7300は同時代の製品で、設計思想の親和性も高い組み合わせです。
- 音質の向上:NS-1000Mのベリリウム振動板(中域8.8cmドーム、高域3cmドーム)が持つ解像度の高い中高域再現と、KA-7300のICLイコライザーによる位相特性の良さが組み合わさります。特にレコード再生でKA-7300のダイレクトコネクション採用イコライザーが生み出す純粋なアナログ信号が、NS-1000Mのベリリウムの情報量を余すところなく再現します。
- おすすめの音楽ジャンル:1970年代のジャズ・クラシックのアナログレコード再生に最適な組み合わせです。KA-7300のICLイコライザーとNS-1000Mのモニター的な解像度が、当時のスタジオ録音の質感を生き生きと蘇らせます。
TRIO KA-7300とTANNOY Ardenとの組み合わせ
TRIO KA-7300とTANNOY Ardenとの組み合わせは以下の通りです。
- 互換性:TANNOY Arden(¥220,000/台、1976年頃)は公称インピーダンス8Ω・許容入力85W・出力音圧91dB/Wの38cm同軸型デュアルコンセントリックスピーカーです。KA-7300の65W出力はArdenの85W許容入力を下回るため、安全に駆動できます。91dB/Wという高感度のおかげでKA-7300の65Wでも広いリスニングルームを十分に満たす音圧が得られます。
- 音質の向上:Ardenの38cmデュアルコンセントリックHPD385Aが持つ点音源的な音像定位と30Hz~20kHzの豊かな低域再生に対し、KA-7300のL/R独立電源設計による低いダイナミッククロストークが貢献します。大型フロア型スピーカーの低域エネルギーが大きな過渡的信号であっても、L/R独立電源がチャンネル間の干渉を防ぎ、左右の音場分離を鮮明に保ちます。
- おすすめの音楽ジャンル:クラシックの大編成・ジャズのライブ録音・古楽器演奏など、38cmウーファーの豊かな低域と同軸ユニットの音像定位が活きるジャンルに最適な組み合わせです。1970年代の英国スピーカーと同時代のTRIOアンプの組み合わせは、時代の空気を感じさせる音楽体験を提供します。
TRIO KA-7300とSPENDOR BC-IIとの組み合わせ
TRIO KA-7300とSPENDOR BC-IIとの組み合わせは以下の通りです。
- 互換性:SPENDOR BC-II(1973年発売、¥138,000/台)はインピーダンス8Ω・最大入力50W・周波数特性40Hz~20kHzの3ウェイバスレフ型スピーカーです。KA-7300の65W定格出力はBC-IIの最大入力50Wを上回るため、大音量域での使用には注意が必要です。実際のリスニングでは平均電力が定格をはるかに下回るため、適切な音量管理のもとで英国スピーカー本来の音楽性を楽しめます。
- 音質の向上:BC-IIの世界特許ベクストレンコーン採用20cmウーファーと3.8cmドームツイーターHF-1300が持つ英国スピーカーらしい自然な音色と音楽的表現力に対し、KA-7300の全段直結OCL回路による位相特性の良さが相乗効果を生み出します。入力コンデンサーを排除したKA-7300の信号経路の純粋さが、ベクストレンコーンの繊細な表現を忠実に増幅します。
- おすすめの音楽ジャンル:英国ロック・フォーク・チェンバー・ミュージックなど、中音域の自然な音色と演奏者の息遣いが重要な音楽に向いた組み合わせです。1973年の英国製スピーカーと1975年の日本製アンプのヴィンテージ・クロスオーバーが、50年を経た今も色褪せない音楽体験を作り出します。
TRIO KA-7300は、L/R独立セパレート電源・ICL方式イコライザー・全段直結OCL回路・32接点アッテネーターボリュームを¥65,000で実現した1975年のヴィンテージ・プリメインアンプです。
比較3機種(Technics SU-8600・SANSUI AU-999・TRIO KA-7500)との検討を通じて明らかになったのは、同年発売の競合機より低価格でありながらL/R独立電源と32接点ボリュームを搭載するKA-7300のコストパフォーマンスの高さです。YAMAHA NS-1000M・TANNOY Arden・SPENDOR BC-IIとの組み合わせで、1970年代ヴィンテージシステムの真骨頂を存分に体感できます。
最後まで読んでいただきありがとうございました
TRIO KA-7300の詳細スペック一覧
| TRIO KA-7300のスペック詳細 | |
|---|---|
| 型式 | インテグレーテッドアンプ |
| 定格出力(両ch動作) | 65W+65W(8Ω、20Hz~20kHz) / 70W+70W(8Ω、1kHz) |
| 全高調波歪率 | 0.1%(定格出力時、8Ω) / 0.04%(1W出力時、20Hz~20kHz、8Ω) |
| 混変調歪率 | 0.1%(定格出力時、8Ω) |
| 出力帯域特性(IHF) | 5Hz~60kHz |
| SN比(IHF、Aカーブ) | 110dB |
| 入力感度/インピーダンス(パワーアンプ) | 1.0V/50kΩ |
| ダンピングファクター | 30 |
| 最適負荷インピーダンス | 4Ω~16Ω |
| 入力感度/インピーダンス(プリアンプ) | Phono:2.5mV/50kΩ / Tuner、Aux、Tape:150mV/50kΩ |
| SN比(プリアンプ、IHF-Aカーブ) | Phono:76dB(5mV入力) / Tuner、Aux、Tape:90dB |
| 最大許容入力(1kHz、歪0.1%) | Phono:210mVrms |
| トーンコントロール | Bass 150Hz:±7.5dB(50Hz) / Bass 400Hz:±7.5dB(100Hz) / Treble 3kHz:±7.5dB(10kHz) / Treble 6kHz:±7.5dB(20kHz) |
| フィルター | Low:18Hz・40Hz、12dB/oct / High:8kHz、12dB/oct |
| 定格消費電力 | 170W |
| 外形寸法 | 幅430×高さ149×奥行376mm |
| 重量 | 14kg |
