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A&D GX-Z7000は完全ヴィンテージなカセットデッキです。
本記事では、その魅力を特徴やおすすめのヴィンテージ音楽機器との組み合わせなど、徹底解説します。
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A&D GX-Z7000の概要と特徴
A&D GX-Z7000のスペック | |
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ヘッド | 録音:LC-OFCスーパーGXヘッド 再生:LC-OFCスーパーGXヘッド 消去:消去ヘッド |
モーター | キャプスタン駆動用:FGサーボDDモーター リール駆動用:DCモーター カム駆動用:DCモーター |
ワウ・フラッター | 0.025%WRMS ±0.04%WPeak(EIAJ) |
周波数特性 | 20Hz~19kHz ±3dB(ノーマルテープ) 20Hz~20kHz ±3dB(クロームテープ) 20Hz~21kHz ±3dB(メタルテープ) |
SN比(EIAJ) | 59dB(メタルテープ) ドルビーB NR:1kHzで5dB、5kHz以上で10dB改善 ドルビーC NR:500Hzで15dB、1kHz~10kHzで20dB改善 |
外形寸法 | 幅440x高さ111x奥行353mm |
重量 | 6.5kg |
A&D GX-Z7000は、IPLS(自動頭出し)機能を搭載したカセットデッキです。
さらに、録音・再生アンプ回路には独自のツインアクティブ電源を採用しています。
以下から、A&D GX-Z7000の特徴について詳しく解説します。
①:録音ヘッドと再生ヘッドにはLC-OFC巻線スーパーGXヘッドを採用
A&D GX-Z7000の録音ヘッドと再生ヘッドにはLC-OFC巻線スーパーGXヘッドを採用しています。
LC-OFC巻線スーパーGXヘッドってなに?
一言で解説するのは難しいので、言葉を分解しながら解説します。
まず「LC-OFC」とは「線形結晶無酸素銅」の略で、これは無酸素銅の結晶を線状に引き伸ばすことで、結晶粒界が大幅に減少しています。
結晶粒界とは、金属内部の微細な結晶の境界のことで、電気信号がこれを通過する際にコンデンサー効果が生じることがあります。
しかし、LC-OFCではその数が大幅に減少しているため、伝送歪が著しく低減され、純粋な信号が伝えられるようになっています。
特に再生ヘッドでは、信号電流レベルが非常に微小なため、この特性によって音の解像力が向上し、よりクリアな音質を実現しています。
次に「スーパーGXヘッド」とは、録音・再生ヘッドのコアに高周波特性に優れたフェライトを使用している技術のことです。
ちなみに、フェライトとは鉄酸化物を主成分とする磁性材料の一種で、主に鉄の酸化物(酸化鉄)と金属酸化物の複合体です。
A&D GX-Z7000は独自の技術によって高精度に加工されたフェライトコアを使用しており、高域でのロスが少なく、ワイドな周波数特性を実現しています。
これにより、音質面でのロスも少なく、低歪率を達成しています。
また、スーパーGXヘッドは帯磁しにくく、耐摩耗性に優れているなどの物理的なメリットも併せ持っています。
これにより、テープとの接触時にゴミが付着しにくく、摩擦による変調ノイズの発生を低減しており、長時間の使用でも安定した音質を保つことができます。
②:メカニズム部にはクローズドループ・ダブルキャプスタン方式を採用
A&D GX-Z7000のメカニズム部にはクローズドループ・ダブルキャプスタン方式を採用しています。
クローズドループ・ダブルキャプスタン方式ってなに?
クローズドループ・ダブルキャプスタン方式は、カセットデッキにおけるテープ駆動システムの一つで、テープの運動を精密にコントロールする為に設計されています。
この方式は、二本のキャプスタン(テープを引っ張る軸)と、それぞれに対応するピンチローラー(キャプスタンにテープを押し付けるための小さなローラー)を使用しています。
テープはキャプスタンとピンチローラーの間で挟まれ、テープの走行速度を一定に保つために同時に動かされます。
クローズドループ・ダブルキャプスタン方式の利点は以下です。
- 安定したテープ運動:デュアルキャプスタンを使用することで、テープがデッキを通過する際の安定性が大幅に向上します。これは、テープの走行がキャプスタンの間で制御されるため、リールの影響を受けにくくなるからです。
- ワウフラッターの減少:テープ速度の変動によって生じるワウフラッターという音質の揺らぎが、クローズドループの制御によって著しく減少します。これは、テープの速度が非常に安定しているためです。
- テープの微振動の抑制:デュアルキャプスタン間のテープスパンが短く、テープの振動が減少するため、特に高周波での音質が向上します。
ちなみに、カセットデッキのメカニズム部とは、カセットテープの読み取りや録音を行うための物理的な動作を制御する部分の総称です。
これにはテープを運動させるための駆動系や、テープと相互作用する録音・再生ヘッド、消去ヘッド、さらにはテープのガイドやブレーキ、テープの張り具合を調整するテンションアームなど、様々な部品や機構が含まれます。
さらに、A&D GX-Z7000のメカニズム部にはデュアルワイドテープガイドが備え付けられています。
デュアルワイドテープガイドは、テープがデッキ内を直線的に安定して移動するようにガイドする役割を持ちます。
これにより、テープがたるんだりねじれたりすることなく、確実に録音・再生ヘッドの正確な位置を通過することが可能になります。
③:A&D GX-Z7000にはマニュアルバイアスコントロール機能を搭載
A&D GX-Z7000にはマニュアルバイアスコントロール機能が搭載されています。
マニュアルバイアスコントロール機能とは、録音時のバイアス(偏り)を手動で調整することができる機能のことです。
バイアスはテープに記録される音声信号の品質に直接影響するため、この機能は録音の品質をユーザーが細かく調整できるようにする重要な特徴です。
さらに、マニュアルバイアスコントロールにより、ユーザーは録音バイアス値を±20%の範囲で微調整することが可能です。
これにより、
- 録音される音楽の高域や低域の応答
- ダイナミックレンジ
- 歪みのレベル
などを、テープの特性に合わせて最適化することも可能になります。
録音バイアス専用のスレーブバイアス発振回路を設置することで、ユーザーはより正確なバイアス調整を行うことができ、結果としてより自然で高品質な録音結果を得ることができます。
A&D GX-Z7000と他のヴィンテージカセットデッキとの比較
当然ですが、ヴィンテージカセットデッキはA&D GX-Z7000だけではありません。
以下では
- SANSUI SC-D77
- YAMAHA K-650
- SHARP/OPTONICA RT-W5
との比較を解説しているので、興味のある方は参考にしてみてください。
A&D GX-Z7000とSANSUI SC-D77との比較
A&D GX-Z7000とSANSUI SC-D77との比較は以下の通りです。
- ヘッド:GX-Z7000はLC-OFC巻線スーパーGXヘッドを使用し、高解像度とクリアネスを提供しますが、SC-D77はフェジアロイ・コンビネーションヘッドを採用しており、それぞれ独自の高品質な音響特性を有します。どちらも優れた性能を提供すると評価できます。
- モーター:GX-Z7000にはFGサーボDDモーターが、SC-D77にはFGサーボ・DCダイレクト・ドライブモーターが搭載されており、両機種とも高精度なテープ駆動を実現しています。効率的な駆動系により、両機種とも良い評価を受けるでしょう。
- ワウフラッター:GX-Z7000は0.025%WRMSという低いワウフラッターを実現しており、SC-D77の0.035%WRMSよりも優れています。GX-Z7000がより安定したテープ走行を提供する点で優れています。
- 周波数特性:GX-Z7000はメタルテープ利用時に20Hzから21kHz、SC-D77は20Hzから22kHzの再生が可能です。わずかに広い範囲をカバーするSC-D77が優れていると言えます。
- SN比:GX-Z7000のSN比は59dB、SC-D77は60dB以上となっており、SC-D77がわずかに良い性能を示しています。
- 重量:GX-Z7000は6.5kg、SC-D77は5.9kgとなっており、SC-D77の方が軽量です。
- 音質:GX-Z7000は独自のヘッドとダブルキャプスタン方式を採用し、高品質な音響特性を持ちますが、SC-D77もフェジアロイヘッドやダイレクトドライブモーター、SASFといった技術を採用しており、両機種ともに高い音質を提供します。
A&D GX-Z7000とYAMAHA K-650との比較
A&D GX-Z7000とYAMAHA K-650との比較は以下の通りです。
- ヘッド:GX-Z7000はLC-OFCスーパーGXヘッドを採用し、高い解像度とクリアネスを実現しています。一方でK-650はアモルファスヘッドを採用し、高い透磁率と低歪率を提供します。どちらのヘッドも各々の特徴を活かして高品質な録音が可能です。
- モーター:GX-Z7000ではキャプスタンにFGサーボDDモーターを使用しており、K-650はDCサーボモーターを採用しています。両モデルともに精密なテープ駆動に優れているため、良好な性能を期待できます。
- ワウフラッター:GX-Z7000のワウフラッターは0.025%WRMSで非常に低く、K-650のワウフラッターも0.05%以下と低いですが、GX-Z7000の方がより優れています。
- 周波数特性:GX-Z7000の周波数特性はメタルテープ使用時に20Hzから21kHzの範囲をカバーし、K-650は20Hzから20kHzとなっています。両機種ともに広い周波数帯域をカバーしているが、GX-Z7000の方が若干広い範囲です。
- SN比:GX-Z7000は59dBで、K-650はドルビーCをONにした状態で72dBとなっており、この点ではK-650が優れています。
- 重量:GX-Z7000は6.5kgで、K-650は5.2kgとなっており、K-650の方が軽量ですが、重量は音質に直接関係ないため、優劣を決定づける要素ではありません。
- 音質:GX-Z7000はLC-OFC巻線とスーパーGXヘッドを採用し、高いクリアネスを実現しています。K-650はアモルファスヘッドとドルビーHXプロを搭載し、高い透磁率と低歪率で録音時のバイアスの劣化を抑える技術を採用しており、両機種ともに優れた音質を提供します。
A&D GX-Z7000とSHARP/OPTONICA RT-W5との比較
A&D GX-Z7000とSHARP/OPTONICA RT-W5との比較は以下の通りです。
- ヘッド:GX-Z7000はLC-OFCスーパーGXヘッドを採用し、伝送歪が著しく低減し、クリアネスが向上しています。RT-W5ではSH無酸素銅ヘッドが使用されており、高い録音感度と低歪みが期待できます。両者は高品質なヘッドを使用しており、それぞれの利点があります。
- モーター:GX-Z7000はFGサーボDDモーターを、RT-W5は2スピードFGサーボモーターを使用しており、双方ともに安定したテープ駆動を実現しています。高精度な駆動においては、どちらのデッキも優れています。
- ワウフラッター:GX-Z7000のワウフラッターは0.025%WRMSであり、RT-W5の0.048%WRMSよりも低いです。この点でGX-Z7000が優れた性能を示しています。
- 周波数特性:GX-Z7000はメタルテープで20Hzから21kHzの周波数範囲をカバーし、RT-W5はメタルテープで20Hzから20kHzです。GX-Z7000が若干広い周波数範囲を提供しています。
- SN比:GX-Z7000は59dBで、RT-W5はドルビーCをONにした状態で70dBです。RT-W5がドルビーNRがONの場合において優れたSN比を提供します。
- 重量:GX-Z7000は6.5kg、RT-W5は5.4kgとなっており、RT-W5の方が軽量です。重量は直接音質には関連しませんが、設置や移動の利便性には影響します。
- 音質:GX-Z7000はスーパーGXヘッドとフェライトの高精度加工により優れた音質が期待できますが、RT-W5も高品質な無酸素銅ヘッドとドルビーHXプロの採用で、クリアで歪みの少ない再生を提供します。両機種ともに高い音質を誇ります。
A&D GX-Z7000とヴィンテージプリメインアンプとの組み合わせ
A&D GX-Z7000のようなカセットデッキは、基本的にプリメインアンプに接続して使用するはずです。
その為、以下ではA&D GX-Z7000とヴィンテージプリメインアンプとの組み合わせを解説します。
A&D GX-Z7000と組み合わせるヴィンテージプリメインアンプは、
- Marantz Model 1122
- ONKYO A-912
- Technics SU-V500
です。
興味のある方は参考にしてみてください。
A&D GX-Z7000とMarantz Model 1122の組み合わせ
A&D GX-Z7000とMarantz Model 1122の組み合わせは、以下のような結果が得られます。
- 互換性:A&D GX-Z7000カセットデッキとMarantz Model 1122プリメインアンプの組み合わせは、両者の高品質な音響特性を融合させる理想的なマッチングを提供します。GX-Z7000の高性能録再ヘッドとMarantzの安定した増幅能力は、互換性が高く、オーディオ信号の純度を保ちながら力強いドライブを実現します。
- 音質の向上:Marantz Model 1122のLow TIM設計とDCアンプ構成は、GX-Z7000の詳細な録音と再生能力を補完し、音質の透明度と忠実度を向上させます。さらに、1122の高性能MCヘッドアンプがGX-Z7000のワイドレンジ再生能力を強化し、細部にわたる音のニュアンスを引き出します。
- 機能の拡張:GX-Z7000の多様な機能とMarantz 1122の豊富な接続オプションは、オーディオシステムの機能拡張に貢献します。例えば、1122のトライトーンコントロールを活用して、GX-Z7000で再生される音楽のトーンバランスを微調整することができます。
A&D GX-Z7000とONKYO A-912の組み合わせ
A&D GX-Z7000とONKYO A-912の組み合わせは、以下のような結果が得られます。
- 互換性:A&D GX-Z7000カセットデッキとONKYO A-912プリメインアンプは高い互換性を持っています。ONKYO A-912の入力感度とインピーダンスはGX-Z7000の出力と適切にマッチし、安定した信号のやり取りが可能です。これにより、オーディオシステム全体の同調が良く、信号のロスを最小限に抑えながら使用することができます。
- 音質の向上:ONKYO A-912のディスクリートパワーアンプ構成は、GX-Z7000のリッチな音色と細部まで再現する高性能録再ヘッドの能力を引き出し、音質の向上に寄与します。特に、A-912のソースダイレクト機能は、トーンコントロール回路をバイパスすることで、よりピュアなサウンドを実現し、録音・再生時のオーディオ信号の純度を高めます。
- 機能の拡張:GX-Z7000とA-912の組み合わせにより、機能が拡張されます。例えば、A-912の複数の入力端子とスピーカー出力オプションは、さまざまなオーディオソースやスピーカーシステムへの接続を可能にし、オーディオ環境を多様化させることができます。また、リモコンによる便利な操作が加わることで、利便性が向上します。
A&D GX-Z7000とTechnics SU-V500の組み合わせ
A&D GX-Z7000とTechnics SU-V500の組み合わせは、以下のような結果が得られます。
- 互換性:A&D GX-Z7000とTechnics SU-V500は、互換性の高い組み合わせです。GX-Z7000の出力レベルとインピーダンスは、SU-V500の入力感度とインピーダンスとマッチしており、オーディオ信号の効率的な転送が可能です。この互換性は、ユーザーが快適に両機器を連携させることを可能にします。
- 音質の向上:Technics SU-V500に搭載されているニュークラスA回路は、GX-Z7000のクリアな音質を更に向上させます。ニュークラスA回路は、低歪みで豊かなサウンドステージを提供し、GX-Z7000からのデリケートなオーディオ信号を忠実に増幅します。
- 機能の拡張:SU-V500は、フォノ入力を含む複数の入力と2系統のスピーカー端子を提供し、GX-Z7000の機能拡張に貢献します。また、付属のリモコンでTechnicsの他のオーディオ機器を制御できるため、ユーザーはシステム全体を簡単に操作できます。
A&D GX-Z7000を徹底解説!【他のカセットデッキとの比較】のまとめ
本記事では以下を解説しました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。