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KENWOOD KX-W8020は完全ヴィンテージなカセットデッキです。
本記事では、その魅力を特徴やおすすめのヴィンテージ音楽機器との組み合わせなど、徹底解説します。
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KENWOOD(ケンウッド)KX-W8020の概要と特徴
KENWOOD(ケンウッド)KX-W8020のスペック | |
---|---|
ヘッド(A・Bデッキ共通) | 録音・再生:ハードパーマロイヘッド 消去:ダブルギャップフェライトヘッド |
ワウ・フラッター | 0.06%(WRMS) |
周波数特性 | メタル:30Hz~16kHz |
SN比 | 72dB(Dolby NR C、ON時) |
外形寸法 | 幅440x高さ127x奥行268mm |
重量 | 4.7kg |
KENWOOD KX-W8020は、A・B両デッキに録音機能を搭載したWクイックリバースデッキです。
さらに、タイマー連動ACインプットを採用しています。
以下から、KX-W8020の特徴について詳しく解説します。
①:KENWOOD KX-W8020にはドルビーHX-PROとオートバイアスを搭載
KENWOOD KX-W8020には「ドルビーHX-PRO」と「オートバイアス」が搭載されています。
その2つは一体なに?
まず「ドルビーHX-PRO」はカセットテープの録音時に音質を改善するために開発された技術です。
以下は「ドルビーHX-PRO」の具体的な特徴や利点です。
- バイアス信号の最適化:ドルビーHX-PROは録音時のバイアス信号の量を動的に調節します。バイアス信号は、カセットテープに録音する際に必要な高周波数の信号で、テープの磁気特性を最適化し、特に高域の音質を改善するために用いられます。
- ダイナミックレンジの拡大:ドルビーHX-PROによるバイアス制御は、テープのダイナミックレンジを拡大します。これにより、音楽の静かな部分から大きな部分まで、より幅広いダイナミクスをテープに記録できるようになります。
- 歪みの減少:この技術は、テープに記録される音楽のピークレベルがテープの飽和点を超えないように調整することで、録音の歪みを減少させます。
- 自動調整機能:ドルビーHX-PROは録音中に音楽のダイナミクスをリアルタイムで分析し、自動的にバイアスレベルを調整します。これにより、ユーザーが手動でバイアス設定を調整する必要がなくなり、操作が簡単になります。
次に「オートバイアス」はカセットデッキの高度な録音機能の一つで、テープの種類や特性に応じて録音バイアスレベルを自動的に調整するシステムです。
以下は「オートバイアス」の具体的な特徴や利点です。
- テープの種類に応じた最適化:カセットテープにはノーマル、クローム、メタルなど異なるタイプがあり、それぞれ独自の磁気特性を持っています。オートバイアスはこれらの特性を自動的に検出し、最適な録音条件を設定します。
- 録音品質の向上:バイアス信号は、テープに音声信号を録音する際に必要な高周波数の信号です。適切なバイアスレベルの設定により、高域応答の改善や歪みの低減が実現され、全体的な録音品質が向上します。
- 自動調整機能:デッキは録音する前にテープの特性をテストし、その結果に基づいてバイアスレベルを自動で調整します。これにより、ユーザーが手動で設定を行う手間が省かれ、一貫した品質の録音が容易になります。
- 周波数応答の均一化:オートバイアスは特に低域と高域での周波数応答を均一に保つことに役立ちます。異なる周波数での録音レベルが同じになるように自動的に調整することで、音楽の全範囲を忠実に再現します。
②:KENWOOD KX-W8020にはDPSS機能を搭載
KENWOOD KX-W8020にはDPSS機能が搭載されています。
DPSS機能(Digital Program Search System)とは、テープ上の曲の開始部分を自動的に検出し、次々に再生するインデックススキャン機能です。
このシステムは特に音楽が多く含まれるカセットテープにおいて便利で、曲間の静かな部分を感知してスキップし、次の曲へと迅速に移動します。
これにより、ユーザーは手動でテープを早送りや巻き戻しすることなく、簡単に特定の曲を見つけて再生することができます。
DPSSはデジタル技術に基づいており、精密なトラッキングによる迅速で正確な曲の検出を可能にします。
③:一つのソースから2本のテープに同時録音が可能
KENWOOD KX-W8020は、一つのソースから2本のテープに同時録音が可能です。
このシステムでは2つの独立したカセットトランスポート(デッキAとデッキB)が一体化されており、各トランスポートは独自の録音ヘッド、消去ヘッドおよびキャプスタンドライブメカニズムを備えています。
キャプスタンドライブメカニズムは、カセットデッキや他のテープレコーダーで使用される重要な部分で、テープの動きを正確に制御するためのシステム。
そして、一つのオーディオソース(例えばCDプレーヤーのアナログ出力、FM/AMチューナー、外部マイク入力など)からの信号を2つのデッキに並行して供給し、同期録音を行います。
このプロセスは、オーディオソースからのアナログ信号がデッキのプリアンプ回路に入力され、そこから左右のチャンネルに分岐し、それぞれのデッキの録音ヘッドに供給されることで実現します。
同時録音のプロセスは、オーディオ信号のアンプリチュード、周波数特性およびダイナミックレンジが精密に維持され、両方のテープに均一に記録されます。
アンプリチュードとは、波(音波や電磁波など)の大きさまたは強度を指す用語。
この機能は、
- マルチプルコピーの作成
- オーディオバッキングアップの迅速化
- 複数リスナーに同時にコンテンツを配布する
などに使える機能です。
KENWOOD KX-W8020と他のヴィンテージカセットデッキとの比較
当然ですが、ヴィンテージカセットデッキはKENWOOD KX-W8020だけではありません。
以下では
- OPTONICA RT-E85
- SONY TC-KA5ES
- YAMAHA KX-1000
との比較を解説しているので、興味のある方は参考にしてみてください。
KENWOOD KX-W8020とOPTONICA RT-E85との比較
KENWOOD KX-W8020とOPTONICA RT-E85との比較は以下の通りです。
- ヘッド:KENWOOD KX-W8020はハードパーマロイヘッドを録音・再生用に、ダブルギャップフェライトヘッドを消去用に使用しています。これに対し、OPTONICA RT-E85では録再用にセンダストヘッド、消去用にダブルギャップフェライトヘッドを採用しており、特にセンダストヘッドはメタルテープの高域特性を発揮する設計となっています。
- ワウフラッター:KENWOOD KX-W8020のワウフラッターは0.06%(WRMS)、OPTONICA RT-E85は0.04%(WRMS、JIS)となっており、OPTONICAの方がわずかに優れた性能を示しています。
- 周波数特性:KENWOOD KX-W8020はメタルテープでの周波数特性が30Hz~16kHzです。一方、OPTONICA RT-E85はメタルテープで20Hz~22kHzと、より広い周波数範囲をカバーしています。
- SN比:KENWOOD KX-W8020はDolby NR Cオン時で72dBのSN比を持ちます。OPTONICA RT-E85はDolbyオン時でクロームテープ使用時68dBですが、Dolbyオフ時のSN比は明示されていません。
- 重量:KENWOOD KX-W8020は4.7kgで、OPTONICA RT-E85は8.0kgと、OPTONICAの方が重量があります。
- 音質:両モデルの音質については、KENWOOD KX-W8020はドルビーHX-PROとオートバイアス機能を搭載し、テープの記録能力を向上させています。OPTONICA RT-E85はセンダストヘッドと広い周波数特性で高い音質を実現しており、特にメタルテープでの性能が際立っています。
KENWOOD KX-W8020とSONY TC-KA5ESとの比較
KENWOOD KX-W8020とSONY TC-KA5ESとの比較は以下の通りです。
- ヘッド:KENWOOD KX-W8020は録音・再生用にハードパーマロイヘッド、消去用にダブルギャップフェライトヘッドを採用。一方、SONY TC-KA5ESは録音、再生、消去用に別々のヘッドを使用しており、特に再生用には高品位なヘッドを採用しています。SONYの方が精密なヘッド構成で優れた音質を実現しています。
- ワウフラッター:KENWOOD KX-W8020は0.06%(WRMS)、SONY TC-KA5ESは±0.04%Wpeak、0.022%WRMSとなっており、SONYの方がわずかに低いワウフラッターを実現し、より安定した再生が期待できます。
- 周波数特性:KENWOOD KX-W8020はメタルテープで30Hz~16kHzの周波数特性を持ちますが、SONY TC-KA5ESは15Hz~22kHzとより広範囲な周波数応答を実現しています。
- SN比:KENWOOD KX-W8020はDolby NR Cオン時で72dB、SONY TC-KA5ESはドルビーNR Sオン時で80dBと、SONYの方が高いSN比を達成しており、よりクリアな音質を提供します。
- 重量:KENWOOD KX-W8020は4.7kgに対し、SONY TC-KA5ESは10.7kgと重く、より堅牢な構造をしていることが伺えます。
- 音質:SONY TC-KA5ESはサファイアキャプスタンベース方式、ドルビーS NR、Rコアトランス、FBシャーシなど高品質な部品と技術を採用し、音質面で優れています。KENWOOD KX-W8020もドルビーHX-PROやオートバイアス機能を備えていますが、SONYの方がより高い音質を実現していると言えます。
KENWOOD KX-W8020とYAMAHA KX-1000との比較
KENWOOD KX-W8020とYAMAHA KX-1000との比較は以下の通りです。
- ヘッド:KENWOOD KX-W8020はハードパーマロイヘッドとダブルギャップフェライトヘッドを採用しています。YAMAHA KX-1000はアモルファスヘッドを採用し、特に高域での性能が優れています。YAMAHAの方が高品位なヘッドにより、より詳細な音を再現できます。
- ワウフラッター:KENWOOD KX-W8020のワウフラッターは0.06%(WRMS)ですが、YAMAHA KX-1000は±0.06%以下(W.Peak、EIAJ)、0.03%以下(W.RMS、JIS)と、若干YAMAHAの方が低い値を示しており、より安定した再生が可能です。
- 周波数特性:KENWOOD KX-W8020はメタルテープで30Hz~16kHzの周波数特性を持ちますが、YAMAHA KX-1000は20Hz~24kHzとより広い周波数範囲をカバーしています。特に高域での性能が優れていることが分かります。
- SN比:KENWOOD KX-W8020はDolby NR Cオン時で72dBですが、YAMAHA KX-1000はdbxオン時で95dBと非常に高いSN比を実現しています。dbxの使用によりYAMAHAの方がノイズが大幅に減少し、クリアな音質を提供します。
- 重量:KENWOOD KX-W8020は4.7kg、YAMAHA KX-1000は8.4kgとYAMAHAの方が重く、より堅固な構造を持っていると推測されます。
- 音質:YAMAHA KX-1000はアモルファスヘッド、dbx NR、ORBiTシステム、3巻線マッシブ電源トランスなどを採用し、優れた音質を提供しています。一方のKENWOOD KX-W8020もドルビーHX-PROやオートバイアス機能を備えていますが、総合的に見るとYAMAHAの方が高品質な音質を提供すると評価できます。
KENWOOD KX-W8020とヴィンテージプリメインアンプとの組み合わせ
KENWOOD KX-W8020のようなカセットデッキは、基本的にプリメインアンプに接続して使用するはずです。
その為、以下ではKENWOOD KX-W8020とヴィンテージプリメインアンプとの組み合わせを解説します。
KENWOOD KX-W8020と組み合わせるヴィンテージプリメインアンプは、
- LUXMAN L-550A
- DENON PMA-300V
- Pioneer SA-8900
です。
興味のある方は参考にしてみてください。
KENWOOD KX-W8020とLUXMAN L-550Aの組み合わせ
KENWOOD KX-W8020とLUXMAN L-550Aの組み合わせは、以下のような結果が得られます。
- 互換性:KENWOOD KX-W8020カセットデッキとLUXMAN L-550Aプリメインアンプの互換性は、主にラインレベルのオーディオ接続に関わります。KX-W8020のライン出力はL-550Aのライン入力に適合し、スムーズな接続が可能です。ただし、KENWOODのカセットデッキには特定の機能(シンクロレック機能など)がありますが、これらはLUXMANアンプの機能とは直接関係がないため、その特性を活用することは限られます。
- 音質の向上:LUXMAN L-550Aの純A級増幅とODNF回路は、非常にクリーンで透明感のあるサウンドを提供します。KENWOOD KX-W8020はドルビーHX-PROとオートバイアス機能によって、録音時の音質を最適化します。これらの技術は、カセットテープからの音声再生時において、ノイズを低減し、全体的なオーディオ品質を向上させる効果があります。
- 機能の拡張:KENWOODのカセットデッキとLUXMANのアンプを組み合わせることにより、多様なオーディオソースを取り込む柔軟性が提供されます。例えば、LUXMANアンプのフォノ入力を活用してレコードプレーヤーを接続し、その音声をKENWOODのデッキで録音することができます。これにより、アナログレコードの音楽をデジタルメディアに変換して保存するなど、多目的なオーディオ体験が可能になります。しかし、両機器間の直接的な機能連携は期待できませんが、個々の機器の強みを活用することで、豊かなオーディオ体験が実現します。
KENWOOD KX-W8020とDENON PMA-300Vの組み合わせ
KENWOOD KX-W8020とDENON PMA-300Vの組み合わせは、以下のような結果が得られます。
- 互換性:KENWOOD KX-W8020カセットデッキとDENON PMA-300Vプリメインアンプの間には、標準的なラインレベルの互換性があります。KX-W8020の出力はPMA-300VのCD、DAT、Tuner、AUX/Video、Tape入力端子に適切に接続可能です。しかし、両機種間で特殊な機能連動は期待できませんが、基本的なオーディオ信号の伝送においては十分に互換性があります。
- 音質の向上:PMA-300Vはシンプル&ストレートの回路設計により低歪みとクリアなサウンドを提供します。一方、KX-W8020にはドルビーHX-PROなどの高度な録音技術が搭載されており、カセットデッキの音質向上に貢献します。この組み合わせにより、カセットテープからの再生音質が最適化され、特に音の透明感や解像度が向上する可能性があります。
- 機能の拡張:DENON PMA-300Vは入力選択が多彩で、異なるオーディオソースを接続しやすい構造を持っています。KENWOOD KX-W8020を接続することで、カセットテープの録音・再生機能が追加され、オーディオシステムの用途が拡張されます。特に、KX-W8020のハイスピードダビングや同時録音機能は、より柔軟な音源管理を実現し、多様なリスニング体験を提供します。ただし、DENONのアンプに直接的に機能を追加するわけではなく、個々の機器の機能を最大限に活用する形になります。
KENWOOD KX-W8020とPioneer SA-8900の組み合わせ
KENWOOD KX-W8020とPioneer SA-8900の組み合わせは、以下のような結果が得られます。
- 互換性:KENWOOD KX-W8020カセットデッキとPioneer SA-8900プリメインアンプの組み合わせは、互換性の面で良好です。KX-W8020の出力はSA-8900のLine、AUX、またはTape入力端子に適切に接続可能で、一般的なオーディオ接続において問題はありません。ただし、特殊な機能連動は期待できませんが、基本的なオーディオ信号の伝送においては問題ありません。
- 音質の向上:Pioneer SA-8900は高品質なオーディオパーツを使用しており、特に低歪みとワイドレンジな再生能力を持ちます。KENWOOD KX-W8020はドルビーHX-PROなどの高度な録音技術を備えており、これによりカセットテープからの再生音質が向上します。組み合わせにより、特に透明感やダイナミックレンジの向上が期待できます。
- 機能の拡張:Pioneer SA-8900プリメインアンプにKENWOOD KX-W8020を接続することで、カセットテープの録音・再生機能が追加され、オーディオシステムの用途が拡張されます。KX-W8020のハイスピードダビングや同時録音機能は、柔軟な音源管理を可能にし、さまざまなリスニング体験を提供します。ただし、SA-8900のアンプ自体に直接的な機能拡張はありませんが、カセットデッキとアンプの機能を組み合わせることで、より豊かなオーディオ環境を構築できます。
KENWOOD KX-W8020を徹底解説!【他のカセットデッキとの比較】のまとめ
本記事では以下を解説しました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。