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SONY TA-F777ESは、ヴィンテージなプリメインアンプです。
本記事では、その魅力を特徴やおすすめのヴィンテージ音楽機器との組み合わせなど、徹底解説します。
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SONY(ソニー)TA-F777ESの概要と特徴
SONY(ソニー)TA-F777ESのスペック | |
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定格出力 | 180W+180W(20Hz~20kHz、0.004%、4Ω) |
入力感度/インピーダンス | Power in:800mV/50kΩ |
高調波歪率 | 0.004%(20Hz~20000Hz、定格出力時) |
S/N比 | Phono MM:82dB Phono MC:74dB |
ダイナミックレンジ | 120dB |
消費電力 | 300W |
外形寸法 | 幅430x高さ155x奥行450mm |
重量 | 19kg |
SONY TA-F777ESは1983年に発売したプリメインアンプです。
パワーアンプ部には高速出力素子Hi-fTトランジスタを極小カットオフ領域で働かせる、レガーリニア方式を採用しています。
では、以下からSONY TA-F777ESの特徴を解説します。
①:オーディオ・カレント・トランスファ方式を採用
SONY TA-F777ESはオーディオ・カレント・トランスファ方式を採用しています。
オーディオ・カレント・トランスファ方式ってなに?
一言で解説するのは難しいので、以下で詳しく解説します。
オーディオ・カレント・トランスファ方式は、プリアンプ部の出力が電圧信号として出力された後、それを一度電流信号に変換します。
この変換はカレント変換アンプによって行われます。
その後、リニアゲインコントロール方式アッテネーターと呼ばれる部品によって、再び電圧信号に変換されます。
「リニアゲインコントロール方式アッテネーター」は、オーディオ信号のゲイン(増幅度)を調整するための特殊なアッテネーター(減衰器)です。
一般的なアッテネーターとは異なり、この方式ではゲインの調整が非常に線形的に行われます。
オーディオ・カレント・トランスファ方式の大きな利点は「電気的な分離」です。
パワーアンプから見たとき、プリアンプ部は無限大のインピーダンスを持つため、両者は電気的に完全に分離されています。
これにより、各アンプ部が独立して特性を追求できるのです。
以下は、オーディオ・カレント・トランスファ方式のその他の利点です。
- 電気的な分離とインピーダンスマッチング:オーディオ・カレント・トランスファ方式では、プリアンプとパワーアンプ間にカレント変換アンプを挿入することで、電気的に完全に分離された状態が実現されます。これにより、インピーダンスマッチングが容易になり、信号の伝達効率が向上します。特に、プリアンプ部は無限大のインピーダンスを持つため、ロードインピーダンスに影響されずに信号を転送できます。
- 高度なリニアゲインコントロール:オーディオ・カレント・トランスファ方式では、リニアゲインコントロール方式アッテネーターが採用されます。これにより、ゲインを絞るほどインピーダンスが低下するという特性があります。この特性により、SNR(Signal-to-Noise Ratio)が改善され、ダイナミックレンジが広がります。
- 音質劣化要因の排除:オーディオ・カレント・トランスファ方式は、接触抵抗、線材の持つ固有インピーダンス、そしてスイッチやコネクターによる信号劣化を極力排除します。
- 独立した特性追及:オーディオ・カレント・トランスファ方式により、各アンプ部(プリアンプ、パワーアンプ)は独立して特性を追求できます。これにより、例えばハーモニックディストーションやインターモジュレーションディストーションを独立して最小限に抑えることが可能です。
- 高度なボリュームコントロール:リニアゲインコントロール方式アッテネーターを音量調整用ボリュームに採用することで、実使用のボリュームポジションでの諸特性が改善されます。これにより、オーディオ信号の位相ずれやタイミングエラーが最小限に抑えられます。
②:プリアンプ部電源には定電流シャントレギュレーターを採用
SONY TA-F777ESのプリアンプ部電源には、定電流シャントレギュレーターを採用しています。
定電流シャントレギュレーターってなに?
定電流シャントレギュレーターは、電流を一定に保つための電子回路です。
このレギュレーターは、パワーアンプ電源からの影響を排除し、安定したレギュレーションを保証します。
具体的には、外部からのノイズや電源の変動が音質に悪影響を与えることを防ぐ役割を果たします。
以下は、定電流シャントレギュレーターの利点です。
- 高い線形性:定電流シャントレギュレーターは、非常に高い線形性を持っています。これにより、信号の歪み(Distortion)が最小限に抑えられ、オーディオ信号の忠実な再生が可能です。
- ノイズリジェクション:このレギュレーターは、外部からの電磁干渉(EMI)やラインノイズを効果的に除去する能力があります。これは、シグナル・トゥ・ノイズ・レシオ(SNR)の向上に寄与します。
- 高いトランジェントレスポンス:定電流シャントレギュレーターは、急激な負荷変動に対しても素早く反応する能力があります。これにより、ダイナミックレンジ(Dynamic Range)が広がり、音楽の細部まで精緻に再生されます。
- ローカルフィードバック:多くの定電流シャントレギュレーターは、ローカルフィードバック機構を採用しています。これにより、回路内で発生する可能性のある非線形性や歪みを補正し、全体としての性能を向上させます。
- 高いPSRR:定電流シャントレギュレーターは、高いPSRRを持っているため、電源からの影響を効果的に排除します。これは、特に高解像度オーディオや高精度の測定装置において重要な性能指標です。
③:配線材・プリント基板・電源コードなどにLC-OFCを採用
SONY TA-F777ESの配線材・プリント基板・電源コードなどにはLC-OFCが採用されています。
LC-OFCは、線形結晶酸素フリー銅です。
この素材は酸素含有率が非常に低く、結晶構造が一定(線形)であるため、電気伝導性が非常に高いです。
これにより、信号の損失や歪みが最小限に抑えられます。
以下はLC-OFCの利点です。
- 高い伝導性:LC-OFCは、高い電気伝導性を持っています。これにより、オーディオ信号の伝達が効率的に行われ、音質の劣化が防がれます。
- 低い抵抗:この素材は低い抵抗を持つため、信号の損失が少なく、高周波数成分まで忠実に再生されます。これは、特に高解像度の音源を再生する際に有用です。
- ノイズリジェクション:LC-OFCの高い純度と一定の結晶構造により、外部からのノイズや干渉が効果的に排除されます。これは、シグナル・トゥ・ノイズ・レシオ(SNR)の向上に寄与します。
ちなみ、LC-OFCはLinear Crystal Oxygen-Free Copperの略です。
SONY TA-F777ESと他のヴィンテージアンプとの比較
当然ですが、ヴィンテージアンプはSONY TA-F777ESだけではありません。
以下では
- ONKYO Integra A-819
- OPTONICA SM-4000
- DENON PMA-680R
との比較を解説しているので、興味のある方は参考にしてみてください。
SONY TA-F777ESとONKYO Integra A-819との比較
SONY TA-F777ESとONKYO Integra A-819との比較は以下の通りです。
- 実効出力:SONYは180W+180W(4Ω)であり、ONKYOは90W+90W(8Ω)です。出力に関してはSONYが優れています。
- 混変調歪率:SONYの高調波歪率は0.004%、ONKYOの混変調歪率は0.008%です。こちらもSONYが優れています。
- 入力感度/インピーダンス:両者とも多様な入力に対応していますが、ONKYOはより多くのインピーダンス設定が可能です。
- SN比:SONYのS/N比はPhono MMで82dB、ONKYOはPhono MMで87dBです。この点ではONKYOがわずかに優れています。
- 消費電力:SONYは300W、ONKYOは150Wです。消費電力が少ないONKYOがエコフレンドリーであると言えます。
- 重量:SONYは19.0kg、ONKYOは12kgです。設置の容易さを考慮すると、ONKYOが優れています。
- 音質:SONYはオーディオ・カレント・トランスファ方式、ONKYOはWスーパーサーボ方式を採用しています。両者ともに高品質な音を提供しますが、SONYの方がより高度な音質調整が可能です。
SONY TA-F777ESとOPTONICA SM-4000との比較
SONY TA-F777ESとOPTONICA SM-4000との比較は以下の通りです。
- 実効出力:SONY TA-F777ESは180W+180W(4Ω)であり、OPTONICA SM-4000は70W+70W(8Ω)です。明らかにSONYの方が出力が高く、大きなスピーカーも駆動できます。
- 混変調歪率:SONYの高調波歪率は0.004%、OPTONICAは混変調歪率が0.1%(実効出力時)です。この点でもSONYが優れています。
- 入力感度/インピーダンス:両者とも多様な入力オプションがありますが、詳細なスペックを見るとSONYがより高度な設計をしています。
- SN比:SONYのS/N比はPhono MM:82dB、Phono MC:74dBであり、OPTONICAは100dB以上です。この点ではOPTONICAが優れています。
- 消費電力:SONYは300W、OPTONICAは160Wです。消費電力が少ないOPTONICAがエコフレンドリーです。
- 重量:SONYは19.0kg、OPTONICAは16kgです。軽いOPTONICAが設置に便利です。
- 音質:SONYはオーディオ・カレント・トランスファ方式やリニアゲインコントロール方式アッテネーターなど、音質向上のための多数の技術を採用しています。OPTONICAもSLADサーキットや差動増幅回路を採用していますが、SONYがより高度な技術を採用していると言えます。
>> OPTONICA SM-4000を徹底解説!【他のヴィンテージアンプとの比較】
SONY TA-F777ESとDENON PMA-680Rとの比較
SONY TA-F777ESとDENON PMA-680Rとの比較は以下の通りです。
- 実効出力:SONYは180W+180W(4Ω)であり、DENONは85W+85W(6Ω)です。SONYの方が出力が高いです。
- 混変調歪率:SONYの高調波歪率は0.004%、DENONの全高調波歪率は0.008%です。こちらもSONYが優れています。
- 入力感度/インピーダンス:SONYはPhono MM:82dB、Phono MC:74dBであり、DENONはPhono MM:2.5mV/47kΩ、Phono MC:0.2mV/100Ωです。数値が異なるため直接の比較は難しいですが、一般的にはSONYが高感度です。
- SN比:SONYはPhono MM:82dB、Phono MC:74dB、DENONはPhono MM:94dB、Phono MC:75dBです。この点ではDENONがわずかに優れています。
- 消費電力:SONYは300W、DENONは250Wです。消費電力が少ないDENONがエコフレンドリーです。
- 重量:SONYは19.0kg、DENONは7.8kgです。設置の容易さを考慮すると、DENONが優れています。
- 音質SONYは多くの先進的な技術と高品質な部品を使用しており、DENONもピュアな音質を追求しています。しかし、SONYはより高度な技術を採用しているため、音質ではSONYが優れていると言えます。
SONY TA-F777ESとヴィンテージスピーカーとの組み合わせ
以下では、SONY TA-F777ESとヴィンテージスピーカーとの組み合わせを一部解説します。
SONY TA-F777ESと組み合わせるヴィンテージスピーカーは、
- DIATONE SS-300
- Technics SB-6000
- YAMAHA NS-690
です。
興味のある方は参考にしてみてください。
SONY TA-F777ESとDIATONE SS-300の組み合わせ
SONY TA-F777ESとDIATONE SS-300の組み合わせは、以下のような結果が得られます。
- 互換性:SONY TA-F777ESの定格出力は180W+180Wで、DIATONE SS-300の定格入力は15W、最大入力は50Wです。このことから、アンプの出力能力はスピーカーの入力能力を十分にカバーしています。また、SONY TA-F777ESの定格インピーダンスは4Ω、DIATONE SS-300の定格インピーダンスは8Ωであり、これも問題なくマッチします。さらに、両機種ともに高いS/N比とダイナミックレンジを持っているため、クリアでダイナミックなサウンドが楽しめます。
- 音質の向上:SONY TA-F777ESは高調波歪率が非常に低く、また「オーディオ・カレント・トランスファ方式」を採用しているため、非常にクリアで細部まで繊細な音を出力します。一方で、DIATONE SS-300は低域用に20cmコーン型ウーファーとパッシブラジエーター、高域用に5cmコーン型トゥイーターを搭載しており、広い再生周波数帯域を持っています。これにより、低音から高音までバランスよく再生され、リッチな音場が形成されます。
- 機能の拡張:SONY TA-F777ESには多くの高度な機能が搭載されています。例えば、「Direct/On切替え可能なトーンコントロール」によって、音質を自分好みに調整することができます。また、MMとMCのカートリッジセレクターも搭載されているため、より多くのオーディオソースに対応可能です。これらの機能は、DIATONE SS-300と組み合わせることで、さらに多様な音楽体験が可能になります。
SONY TA-F777ESとTechnics SB-6000の組み合わせ
SONY TA-F777ESとTechnics SB-6000の組み合わせは、以下のような結果が得られます。
- 互換性:TA-F777ESは定格出力が180W+180Wで、インピーダンスが4Ωです。一方で、SB-6000はインピーダンスが6Ω、瞬間最大入力が100Wです。この数値から見ても、両者は十分に互換性があります。特に、TA-F777ESの高調波歪率が0.004%と非常に低いため、SB-6000の音質を最大限に引き出すことができます。
- 音質の向上:TA-F777ESはオーディオ・カレント・トランスファ方式を採用しており、プリアンプ部とパワーアンプ部が電気的に完全に分離されています。これにより、各アンプ部の特性を独立して追及することが可能です。一方、SB-6000は低域用に30cmコーン型ウーファー、高域用に3.2cmドーム型トゥイーターを採用しています。この組み合わせにより、低域から高域まで非常にバランスの取れた音質を実現できます。
- 機能の拡張:TA-F777ESは多数の入力端子を持っており、Phono MMとMCのS/N比も優れています。これにより、SB-6000と組み合わせた際にも、多様な音源から高品質な音を楽しむことができます。特に、TA-F777ESにはDirect/On切替え可能なトーンコントロールが搭載されているため、SB-6000の音質を更に引き出すことが可能です。
SONY TA-F777ESとYAMAHA NS-690の組み合わせ
SONY TA-F777ESとYAMAHA NS-690の組み合わせは、以下のような結果が得られます。
- 互換性:SONY TA-F777ESは定格出力が180W+180Wと非常に高く、YAMAHA NS-690は最大許容入力が60Wであり、インピーダンスも8Ωと一般的です。このことから、アンプとスピーカーの間での電気的なマッチングは非常に良いと言えます。特に、SONY TA-F777ESの高調波歪率が0.004%と非常に低いため、NS-690の高性能なユニットが持つ音質を最大限に引き出すことが可能です。
- 音質の向上:SONY TA-F777ESは、オーディオ・カレント・トランスファ方式を採用しており、プリアンプ部とパワーアンプ部が電気的に完全に分離されています。これにより、各アンプ部の特性を独立して追及することができます。一方で、YAMAHA NS-690は3ウェイ・3スピーカー・密閉方式で、各ユニットが高性能です。特に、高域用ユニットが非常に優れた指向特性を持っています。この組み合わせにより、高解像度でダイナミックレンジの広い音楽信号を忠実に再生することができます。
- 機能の拡張:SONY TA-F777ESには、Direct/On切替え可能なトーンコントロールが搭載されています。これにより、音質を損なわずに多様な音楽ジャンルに対応することができます。また、YAMAHA NS-690には、レベルコントロールが連続可変型であり、微妙な音量調整が可能です。さらに、マルチチャンネル用端子が搭載されているため、より高度なオーディオセットアップが可能です。
SONY(ソニー)TA-F777ESを徹底解説!【他のスピーカーとの比較】のまとめ
本記事では以下を解説しました。
最後まで読んでいただきありがとうございました